第29章 俺の事なんて忘れて…
花子 side
「花子~!ほら、頑張れ~!」
「…。」
シャチが私に向かって物凄く良い笑顔で手を叩き声をかける。いや、応援してくれるのはありがたいけど…。
「後、少し!あんよが上手~!」
ゆっくりと足を前に出しシャチに近付く。少しフラ付きながらも私は両手を広げてる彼の胸に飛び込んだ。
「よぉしっ!よしよし!偉いぞぉ~!」
「花子さん、凄いです!昨日より長く歩けましたよ!」
「…ありがとう。」
シャチは私を受け止めると某動物大好きおじさんの如く、私の頭をわしゃわしゃと撫で回す。ミラちゃんも凄い凄いと、喜んでくれている。嬉しいよ?嬉しいけどさぁ…。
「なんか…子供扱いしてない?」
私が歩く練習をする時は誰かしらが付いてくれているんだけど…そのギャラリーは日に日に増えている。
「初めはどうなる事かと思ったが…。」
「掴まり立ちもちょっとしか出来なかったのになぁ…!」
「成長したな!花子っ…!」
「…。」
くぅっ!と目頭を押さえるシャチとペンギン。フランキーさんなんか涙を流してるし…。その姿は幼い子供の成長を喜ぶ親戚のおじさんの様。
「ふふっ、お疲れ様。」
「ロビンちゃん、ありがとう。」
休憩している私にロビンちゃんが車椅子を持ってきてくれた。シャチ達に釣られて他のハートのクルー達も泣き出す様子を遠い目で見つめる。
「皆、嬉しいのよ。」
「喜んでくれるのは嬉しいけど、大袈裟過ぎる…。」
歓喜余ってか嗚咽し出す人も出てきた。イッカク、女の子何だから鼻水拭いて!
「…またやってんのか。」
「「「ギャブデ~ンッ!!」」」
おいおい泣き崩れるクルー達を呆れた顔でロー君が近付いてきた。ここはビシッと言ってもらわないと!
「聞いてくださいよっ!花子っ…今日2mも長く歩けたんですよっ!?」
「…よく頑張ったな。」
「…。」
いや、お前もかいっ?!涙ながらに新記録をシャチが伝えると、ロー君は普段絶対に見せない良い笑顔で私の頭を撫でる。こんな調子だと私が走った時、皆どうなるんだろう…。後日談だけど、ゾロ君にも伝えたら無言で頭を撫でられた。
(…。)なでなで
(いや、お前もかよっ?!)
(ウソップ君…!)君だけだよっ!
(その内、花子の新興宗教とか出来そうね。)