第4章 この苛立ちは君のせい
マルコが去った後、ポーラータング号はしんと静まり返っていた。それもその筈、彼が現れただけでも驚きなのにあろうことかマルコは別れ際花子にキスをしたのだから。
「あの~…。」
その静寂を破ったのは事の発端である花子だった。
「皆、ごめんなさい…。迷惑掛けて。」
「「「…。」」」
しゅんと眉を下げ頭を垂れる。叱られた子供の様なその姿がいつもよりも幼く見え何処か頼りない。
「本当に心配したんだぜ?」
「今度からはちゃんと言えよ!」
「花子に何も無くて本当に良かった…。」
掛けられるのは花子を攻める言葉では無く彼女を心配する言葉。こんなにも自分の事を心配してくれている彼等に嬉しく思うのと同時に申し訳無さが募る。
「…。」
「ロー君?」
無言で近付き自分を見下ろすローを花子は不思議そうに見上げていると、突然彼女の身体がふわりと宙に浮いた。
「へ?」
流れる様な自然な行動に花子の思考は一瞬停止する。しかし、今の状況を理解すると頬を赤らめ声を上げた。
「ロー君、下ろして!」
「…歩けねぇんだろ?」
「大丈夫!もう歩けるから!」
「…黙ってろ。」
ローに横抱きにされ慌てる花子を無視し彼女を抱えたまま、ローは船内へと姿を消した。
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花子 side
何故、私はロー君に抱えられているのだろう?無言のロー君を見上げれば彼は私なんかには目もくれずスタスタと歩いている。
(格好いいなぁ…。)
普通下から見る顔は不細工に見える筈なんだけど、ロー君は365度何処から見ても格好いい。
(へへっ。役得、役得!)
彼と近くにいる事が嬉しくてここぞとばかりにロー君の胸に頬を寄せ擦り寄る。
(あ…。)
ふわりとロー君から微かに香るのは女性物の香水の匂い。分かってはいたけど、いざ現実を突き付けられるとギュッと胸が締め付けられて苦しい…。
(ロー君の女ったらし…イケメン…。)
それでも彼を好きな気持ちは抑えられなくて、それを悟られない様に私はロー君の胸に顔を寄せた。
("不死鳥"のマルコと一緒にいたって事は…そう言う事だよな?)
(花子やるなぁ~!)
(となると、あの賭けは不死鳥の勝ちか?)
(((…。)))
(本当…あんた達、最低。)