第28章 欲張りなあの子
ゾロ side
ーゾロ君に取り返してもらうの!ー
そう言われた時、こいつに頼りにされてるんだと思うとガラにもなく嬉しくなった。
「お前の大切なもんって何だよ。」
「えぇ~とねぇ、コハクでしょ~、ジルさんでしょ~…。」
指を折り花子は自分の大切なもんを数えていく。ルフィ達やトラ男…自分の出会った奴等皆大切な宝物だと言う。
「後…家族と友達かな…。」
ふと呟かれた言葉にぎゅっと胸が苦しくなった。何で気付かなかった?こいつには帰る場所がある。こいつを待ってる奴等がいる事に…。
「…帰りてぇか?」
「…初めはいつか帰れるんだろうって思ってたよ。家族や友達にも会いたい…。」
「…。」
「でも…全部を投げ捨てるには…余りにも大切なものが増えちゃった…。」
そう呟いた花子は今にも消えちまいそうなくらい儚く見えた。俺は思わず花子を引き寄せ腕に閉じ込めた。何処にも行かねぇ様に…俺から離れて行かねぇ様に…。
「…行くな。」
「え…?」
馬鹿な事を言ってる事は分かってる。こいつの帰る場所はここじゃねぇ…こいつを心配している奴等もいる…。だが…。
(俺の側を離れていくな…。)
訳の分からねぇ感情ににモヤモヤしていると、ふとあのアホコックの言葉を思い出す。
ー俺は…花子ちゃんが好きだ。ー
トラ男との会話をたまたま聞いた時、あいつはハッキリと言った。だが、あのアホは自分の気持ちを伝えてやれとトラ男を焚き付けやがった。
(俺だったら…。)
俺だったらそんな馬鹿な真似しねぇ。俺だったら好きな奴を手離す様な…。
(俺は…花子が好きなのか?)
「ゾロ君?」
モゾモゾと腕の中で動く花子を見つめふとそんな事が頭を過る。黒く艶のある髪も、吸い込まれそうな大きな黒い瞳も、柔らかそうな唇も…全部…。
(俺のもんだ。)
「ゾロ君、どうし…んむっ?!」
不思議そうに顔を覗き込む花子の唇に俺は食らい付いた。こいつが笑えば鼓動が早くなる、こいつが他の奴と仲良くしてっと妙にイラつく。
ー私の事、好きなの?ー
前に花子に言われた言葉。それが不思議と胸に溶け込み満たされていく様に感じる。