第28章 欲張りなあの子
花子 side
ゾロ君のキスはいつも荒々しくて…食べられちゃうんじゃないかって思うのに…。何故かな?今の彼は凄く優しく感じる。
「んっ、ふぅ…ンんっ」
「っはぁ…」
少しカサ付いた唇も、絡み取る様な厚い舌も…以前の彼からは想像できないくらい優しく柔らかなものだった。
「んっ…はぁっ…ぞろくん?」
唇が離され身体が宙に浮くとゾロ君は私を胡座をかいた自分の膝の上に跨がらせた。私を見つめる彼の視線が凄く真剣で、でもその中に甘さを含んだ様な瞳に思わずドキッと胸が跳ねる。
「…俺の夢は世界一の大剣豪になる事だ。」
「…うん。」
「その為に俺はもっと強くならなきゃならねぇ。他の事にうつつを抜かしてる暇はねぇんだ。」
世界一の大剣豪。それを成し遂げるのは簡単な事じゃない事は彼の手を…目を見れば分かる。豆で硬くなった手。きっと血の滲む様な努力を今までしてきたんだろう。
「だから…待っていろ。」
「ん?」
「俺があの男を倒し世界一の大剣豪になったら…必ずお前を迎えにいく。」
「!」
ー必ず…お前を迎えに行く。ー
ふとエース君の言葉を思い出す。本当に…皆勝手だなぁ…待っていろって言う癖に、ちっとも迎えに来てくれないんだもん。
「…やだよ。」
「あ?」
「そんなの嫌だよ。ゾロ君は考えた事ある?只待っている事しか出来ない人の気持ち。」
「…。」
もう待ってるだけなんて嫌だ。私に出来る事があるかは分からないけど…只待ってるだけで…守られているだけでいるのは、あの時でおしまい!
「だから…私を見付けてよ!」
「あ?」
「言ったでしょ?私、欲張りになっちゃったの。これから先、私は自分の目でこの世界を見てみたい。」
いつか私はこの世界からいなくなっちゃうかもしれない、皆の記憶から消えてしまうかもしれない。でも…それを只待っているなんて嫌だ!
「待ってるなんて無理!だから…ゾロ君が私を見付けて?」
「…上等だ。」
ニヤリと笑うとゾロ君は私の頬を両手で包み込み力強い瞳で私を見据える。
「お前が何処にいようと…必ず俺が見付け出してやる。」
そう言うとゾロ君は誓いを立てる様にキスをした。私も彼に答える様に逞しいその太い首に腕を回す。