第28章 欲張りなあの子
花子 side
「ゾロ君は…強いね。」
「強かねぇよ。俺がもっと強けりゃあんな事になずにすんだ。」
そう言うとゾロ君は悔しそうに顔を顰めた。まだ若いのに色んな経験をしてきたんだろうなぁ…。色んな壁にぶち当たり、私では想像も出来ない事を…。
「やっぱり、ゾロ君は強い。」
「…まぁ、お前よりは確実に強ぇな。」
「…言ったなぁ。」
ニヤリと意地悪く笑うゾロ君の肩にパンチしてみたけど、ハンッと馬鹿にした様に鼻で笑われた。
「…俺には世界一の大剣豪になると言う夢がある。」
「…。」
「その夢が叶うなら足だろうが何だろうが喜んでくれてやるよ。」
ゾロ君は真っ直ぐとした力強い瞳で何かを見据えている。彼が目標としているものはそれ程大きなものなのだろう。
「後、ルフィ君を海賊王にする事でしょ?」
「俺達の大将だぞ。それぐらいやってもらわねぇと困る。」
「ふふっ、そうだね。」
きっと、ゾロ君の目にはルフィ君が海賊王になる未来が見えているんだろうなぁ。
ー誰1人…史朗殿の事を覚えていなかった…。ー
私にも…それを見る事が出来るかな?皆が夢を叶えて喜び合う中に…私も一緒にいれるかな?
「…なぁ、1ついいか。」
「ん?」
「…もし大切なもんを手に入れる為に大事なもんを失うとしたら…お前だったらどうする?」
まるで私の気持ちを察した様なゾロ君の問いにドキッと心臓が跳ねた。
「どっちも選べない…て言いたい所だけど…優先順位によるかなぁ…。」
「…どっちかは失っても構わねぇって事か?」
「勿論嫌だよ?でも、もしそれで皆が幸せなら…私も幸せだもん。」
例え皆の記憶から私がいなくなっても…彼等の夢が叶うなら…。
「って、前の私ならそう言ったと思う。」
「あ?」
「私の大事なものを失って他の人が幸せになるのならそれでもいい…でも、私欲張りになっちゃったの。」
ルフィ君が海賊王になって、皆が夢を叶えて笑い合っている。でも、その中に私もいられないのは嫌だ。
「だから、大切なものを手に入れた後、ゾロ君に大事なものを取り返してもらうの!」
「…他人任せかよ。」
「頼れる人がいるんなら、頼ってもいいでしょ?私1人なら無理でも誰かと一緒ならどちら失わずにすむと思うの。」
ここまで私を欲張りにさせたんだから、ちゃんと責任は取ってよね!