第28章 欲張りなあの子
ペドロから花子を受け取りゾロは仲間がいるであろう場所を目指す。しかし、ここで忘れてはいけないのが…。
「ゾロ君、ここさっきも通ったよ?」
「…。」
「…何処、行きたいの?」
「…ルフィ達んとこ。」
「…それ、逆だよ?」
早く言えよっ!と目くじらを立てるゾロに行き先を教えられていないと、花子が反論するとぐっと言葉を詰まらせる。
(…くそっ。)
早くペドロから花子を引き離したくて奪い取る様にあの場を離れた。花子案内の元、足を進めていると徐に彼女が口を開く。
「ゾロ君!あっち行ってみよう!」
「あ?」
ルフィ達がいるである方向とは違う方を花子が指差し怪訝な顔を浮かべる。早く、早くと急かされ仕方がないと素直に彼女の指示に従った。
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花子に案内された場所は湖だった。心地よい鳥の囀ずり、木々から差し込む陽の光で水面はキラキラと輝いている。
「綺麗だよね!ベポが教えてくれたの!」
少し休憩しようと破顔する花子を可愛らしく思うのに、ゾロの胸の中にはまたモヤッとしたものが沸き上がってくる。
「…トラ男んとこの奴等と仲良いんだな。」
「そりゃあ、少しの間だったけど一緒にいたんだもん。」
湖の畔に腰掛けると花子はサンダルを脱ぎ水に足を浸ける。きゃっきゃっと楽しそうに足をバタ付かせる彼女の姿にキュンッと胸が鳴る。
「餓鬼かよ…。」
「気持ち~よ、ゾロ君もやりなよ!」
「…。」
花子に言われ少し悩んだがゾロもブーツを脱ぐと足を水に浸けた。冷たい水が身体の火照りを冷ます様に染み渡り心地好い。
「…それ、どうしたの?」
「あ?」
「足の傷…あっ!言いたくないならいいよ!」
花子の目線の先には横一線に刻まれているゾロの傷痕。2年前、ルフィ達とグランドラインに入ったばかりの時に出来た傷だ。
「斬った。」
「…敵にやられたの?」
「いや、自分で。」
「自分で?!」
ぎょっと驚愕している花子に当時の事を話す。あの頃は自分も弱く未熟だった。只、目の前の敵を倒す事に、仲間の命を守る事に必死だった。