第28章 欲張りなあの子
錦えもん side
「そうだ、ゾロ殿。少しよろしいか?」
「今度は何だ?」
某は丸太を運びながら隣を歩くゾロ殿に声を掛けた。初めは共に持つと申し出てくれたが、これは某の仕事!手を煩わせるわけにはいかぬ!
「もし…もしでござるよ。大切なものを手に入れる為に、大事なものを失うとしたら…お主ならどういたす?」
「なんだぁ?謎かけか何かか?」
ルフィ殿の夢は海賊王になる事。それをゾロ殿も望んでおられる。しかし…ルフィ殿の夢が花子殿を失う事と知ったら、ゾロ殿はどう思うであろう。
「難しい事はよく分かんねぇが…俺はどっちも手に入れる。」
「…どちらか1つしか選べぬとしたら?」
「んなもん知るか。大事なもんを手に入れる為に何かを失う何ざ俺はごめんだ。それを邪魔する奴は全部ぶった斬る!大事なもん全部守れない様じゃ…俺はあの男には勝てねぇ!」
「?!」
何かを見据えるゾロ殿の瞳にはギラギラと燃え盛る野心の炎が宿っていた。きっと…多くの経験をしたのであろう。大きな壁にぶち当たり…その度にゾロ殿はその壁を乗り越えてきたのであろう。
「その為にも俺はもっと強くならなくちゃならねぇ。」
「…因みに、ルフィ殿なら何と言うと思う?」
「さぁな。あいつはいつも俺の予想の斜め上を行きやがるから想像も付かねぇが…。」
ー嫌だっ!ー
「あいつならそう言うだろうよ。」
あいつは良くも悪くも我が儘だからなと、笑みを浮かべたゾロ殿からはルフィ殿に対しての絶大な信頼が伺えた。子供の様なその言葉も不思議とルフィ殿なら納得出来る気がする。
(もしかしらた…この者達なら…。)
花子殿を救い出せるかもしれぬ。この者達なら…花子殿の数奇なる運命を打ち砕いてくれるかもしれる。
(同じ轍は…2度と踏まぬ!)
おでん様や史朗殿の様な悲しき結末にならぬ様…海賊王となったルフィ殿の隣で花子殿が笑っていられる様…。
(そうでござる!ゾロ殿!"ワノ国"には意中のおなごに簪を…ゾロ殿?)声がせぬ?
(…。)
(えぇー?!いないー?!)
(…あ?…錦の奴、何処行ったんだ?)迷子か?