第28章 欲張りなあの子
花子 side
どうやらジャック達はズニーシャの左前足を執拗に狙っていた様で、チョッパーさんがミンク達の手を借りて治療に当たった。一歩間違えれば足が使い物にならなくなる程の大傷で危険な状態だったらしい。腹いせにしては達が悪すぎる!
「良かったね…。」
自分が歩けなくなって分かる。自由が利かないもどかしさ…。歩けなくなってしまったらズニーシャはどうなるのだろう?命令に背いたと、命を奪われてしまうのかな…?
「ん?」
「花子~!ガルチュー!」
ぼおっと空を眺めているとコロリと目の前にボールが転がり込んできて、数人のミンクの子供達が駆け寄ってくる。
「ガルチュー、遊んでたの?」
「うん!花子も一緒に遊ぼう!」
私の腕に飛び込み頬を寄せる子供達にツキリと胸が痛む。以前の私なら迷わず一緒に遊んでいたのに…。
「ごめんね、私、自分で歩く事ができないの…。」
「そっか…。」
無邪気な笑顔の子供達から笑顔が消えてしまった。まだ掴まり立ちしか出来ない私にはこの子達と遊ぶ事も出来ない。ごめんねぇっ!全部、ドフィが悪いんだよっ!
「じゃあ、お話聞かせてよ!」
「私も聞きたい!」
「僕、外の世界の事全然知らないから教えて!」
私の気持ちを察してか明るく声を上げる子供達に心が温かくなる。
「いいよ~。でも、ルフィ君達みたいに冒険はした事ないから、あんまり面白くないかも。」
「いいよ!僕達、花子ともっと仲良くなりたい!」
「天使っ…!」
むぎゅむぎゅと私にしがみ付き満面の笑顔を浮かべる子供達を見つめ、私の"ラフテル"はここにあったのだと幸せを噛み締めた。
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倒壊した町の修繕をする木を切り出す為、錦えもんは森の木を伐採していた。無心で刀を振るうが頭に残るのは史朗の事を話した後の花子の顔。
(やはり…伝えるべきでは無かったか…。)
史朗の最後。そして、彼に関わった全ての者の記憶から史朗の存在が消えた。それを知った時、彼女はどんな気持ちだったのだろう。
ー皆にはこの事は黙ってて。ー
余計な心配を掛けたくないとそう微笑んだ花子の顔は穏やかに見えたのに…何処か儚く消えてしまいそうだった。
ー錦、おでんの事を…頼んだよ。ー
その姿が錦えもんの目にはあの時の史朗と重なった。