第28章 欲張りなあの子
1度拠点に戻るかとくじらの森を後にするルフィ達。その時、花子の頭にコハクの声が流れ込む。
『…花子!』
「ん?」
とても焦った様な声。しかし、電波障害を起こした通信器機の様にザラザラと雑音が入り交じり上手く聞き取れない。
『た…へだっ!…海…むかっ…る!』
「…コハク?」
神経を研ぎ澄ませコハクの声に耳を傾ける。不安そうな花子にルフィが顔を覗き込んだ時、ドオンッと大きな音と共に象の背が大きく揺れた。
「きゃっ?!」
「なっ、何だっ?!」
「倒れるぞっ!避けろ!」
「木にしがみ付けっ!」
建物が大きく傾き、同時に象の鳴き声が響き渡る。上下左右と予測不可能な揺れにルフィは抱えている花子をキツく抱き締め足を踏ん張った。
「いてぇっ…!?」
「ルフィ君?!」
「頭が…いたいっ…!」
「モモの助様っ!?いかがなされたっ!?」
頭を抱え膝を付くモモの助に錦えもんが慌てて駆け寄る。たまに何かに声が響くのだと顔を歪めるルフィを花子は心配そうな顔で見つめる。
「っ!お前、誰なんだよっ!?」
「わあっ?!」
「花子!」
「今までで…1番大きな声でござるっ!」
痛みに耐えきれなかったのかルフィは花子を抱えていた腕をパッと離し頭を抱える。支えを失った花子はそのまま重力に従って地面に落下する。
「っ…ありがとう、ロー君。」
間一髪のところでローが能力で花子を救出。頭を抱え苦しむルフィとモモの助に皆動揺を隠せずにいた。どうやら以前も似たような事があったらしい。その時は海賊王ゴール・D・ロジャーと光月おでんだったが、2人共声が聞こえるだけで会話は出来なかったらしい。
「ジャックだ!ジャックでござる!あやつが象を…象を襲っているでござる!」
「ジャックだって!?また来やがったのか!」
「強そうな船が5隻…!9時の方角に…!頭に流れ込んでくる…!怖いっ…!」
カタカタと身体を震わせていたモモの助がハッと声を上げる。なんと2人に呼び掛けていた声はこの国そのものである巨象ズニーシャの声だった。