第27章 真実
花子 side
お祖父ちゃんの話をしてくれた錦えもんさんは悔しそうに唇を噛んだ。何故、忘れていたのか。友でありもう1人の主である彼の事をと…。
「あのね…錦えもんさん。お祖父ちゃんは…皆の事を覚えていたよ。」
「っ!」
「別に責めてる訳じゃ無いの。只、皆の事…凄く楽しそうに話してたから。」
まだ幼かった私はお祖父ちゃんの話の内容が理解出来なかった。でも、いつも楽しそうに話しているお祖父ちゃんを見るのが好きだった。
「…亡くなる直前にお祖父ちゃん、言ってた。」
ー…会いたいなぁ…。ー
一筋の涙を流し、凄くか細くて…弱々しい声。でも、私にはハッキリと聞こえた。きっとあれは皆の事なんだと思う。
「錦えもんさん、頑張ろう!」
「花子殿っ…!」
「きっと大丈夫だよ!"ワノ国"は取り戻せる。だって…こんなにも心強い仲間がいるんだもん。」
涙を流す錦えもんさんの手を握り私はにっこりと微笑んだ。自分の気持ちを悟られぬ様に…そっと痛む心に蓋をした。
「おでん様とお祖父ちゃんの夢…必ず叶えよう!私も出来る限り協力するから。」
「っ!かたじけのうござるっ…!」
ぎゅっと私の手を握り返し何度も錦えもんさんは何度もお礼を言った。すると、シリアスな雰囲気をぶち壊しにする様な声が聞こえてくる。
「あー!錦えもん、何花子の手を握ってんだよ!」
「何っ?!錦えもん!花子は拙者の妻であるぞ!触れる事は許さんっ!」
「いやっ!これはっ…っ!」
「ん?…錦えもん、泣いてんのか?」
花子に泣かされたのかと失礼な事言われたけど…あながち間違いでもないから沈黙を貫いた。
「花子殿が余りにも心優しきおなごだったので、某、感動いたした!」
「何とっ!その美しき心で錦えもんを虜にするとは…流石、拙者の妻でござる!」
「ししっ!花子はいい奴だからなぁ~!後、モモ!花子は俺のだ!」
また喧嘩を始めたルフィ君達に私はツンと鼻が痛んだ。すぐ側にいるのに…何だか皆との距離が凄く遠くに感じる。
「花子殿?…っ?!」
皆の中に…私はいつまでいられるかな?ポロリと目からは落ちた涙を私は錦えもんさんに言われるまで気付かなかった…。