第27章 真実
新しい同盟にルフィ達は興奮が覚めない様子だったが、花子にはある事が頭から離れない。
「ねぇ…錦えもんさん。」
「どうしたでござる?」
「お祖父ちゃん…史朗さんは…どうやって元の世界に戻ったの?」
花子の問いに錦えもんは少し押し黙ると、少し離れた場所に彼女を移動させた。錦えもんの話によれば史朗は突然現れたと言う。まるで、何かに導かれる様に。
「…消えもうした。」
「消えた…?」
「正確には役目を終えたと言うのか…某もおでん様から聞いた話ではあるが。」
錦えもん曰く、史朗もおでんと一緒に海賊王の船に乗ってた。なかなか目的の場所が掴めず右往左往している彼等の前に突然白い鯱が現れた。
「それって…。」
「うむ、スカイオルカでござる。」
スカイオルカは何かを伝える様に鳴き続けたが誰も理解が出来なかった。只1人…史朗を除いて。
「スカイオルカに導かれる様に後を追っていると、あれ程見付ける事の出来なかった最果ての場所におでん様達は辿り着いたのだ。」
やっと見つけた目的の場所に仲間達は喜び涙したと言う。それはおでんも史朗も同じ気持ちだった。喜びを分かち合っている仲間達を史朗は穏やかな微笑みで見つめていた。そして、自分の役目を果たした様に彼の身体は透けていった。
ー史朗っ、何故っ?!ー
ーおでん、どうやら僕はここまでの様だ。最後に君の喜ぶ顔が見れて良かったよ…。ー
ー何を馬鹿な事を言っておる!?これからわし等は"ワノ国"をもっと良い国にしていくのだぞっ!ー
必死に史朗を掴もうとおでんは手を伸ばしたが消え行く彼を掴む事は叶わなかった。
ー君なら大丈夫さ。君なら…必ず"ワノ国"を開国できる。ー
ー無理じゃっ!お主がおらぬと…わしはっ!ー
子供の様に泣きじゃくるおでんを史朗は優しく微笑みかけ、触れる事の出来ない頬にそっと手を添えた。
ー出来る事なら…開国した"ワノ国"を君と見たかった…。ー
そう言った史朗の目からは一筋の涙が溢れ落ちる。その瞬間、彼の身体が弾け無数の光の玉となり天に上る。
ーさようなら…兄さん。トキさんや子供達と仲良くね。ー
その言葉を最後に史朗の声は聞こえなくなった。そして…残酷な事に彼と関わった者全て…誰も史朗の事を覚えていなかった…。