第24章 託された思い
ルフィは非常に怒っていた。それは錦えもんが花子にあられもない格好をさせたからだ。
「まったく、錦の奴!花子に何て格好させてんだ!」
肉を片手に船尾に向かっているルフィはプリプリと愚痴を溢しながら先程の事を思い出す。彼女に向けられた視線。それは、あきらかに花子を女として見ているものだった。
「ナミなら分かるぞ?ナミなら!」
ふすんっと鼻息荒くするルフィは、はてと首を傾げた。何故、ナミならいいのか?何故、花子だったら駄目なのか?
「ルフィ君!」
ふと顔を上げると船尾の所に座りルフィに手を振る花子の姿。柔らかく微笑む彼女の顔を見た瞬間、ルフィの胸がドクンッと脈打った。
(…まただ。)
花子の笑顔を見ればきゅっと胸が締め付けられ切なくなる。花子が他の男と仲良くしていると胸がざわつく。
「どうしたの?胸が痛いの?」
「…何でもねぇ!」
ぐっと胸を押さえ顔を顰めるルフィを花子は心配そうに見つめる。よく分からない胸の鼓動に気付かない振りをして彼女の隣に座った。
「ふふっ、大船長さんは大変だね。」
「むっ!俺は認めてねぇからな!あいつ等が勝手にやっただけだ!」
くすくすと笑う花子にうげっと嫌な顔をするも、周りの笑い声を聞いているルフィはとても楽しげだった。
「サボ君、ルフィ君のお兄さんだったんだね。」
「あぁ、俺も驚いた!サボは死んだと思ってたから…。」
「…私ね、実はサボ君に1回会ってたの。」
「何ぃっ?!」
「ルフィ君の話を聞いた時もしかしてと思ったんだけど…もし違って期待させるのも悪いと思ったから。」
黙っててごめんねと、眉を下げる花子にまたルフィの胸が切なくなった。
「いいんだ!サボは生きていた!それだけで俺は嬉しい!」
「…たった1人のお兄さんだもんね。」
エースと言う唯一の兄を亡くしたルフィにはサボが生きていてくれたと言う事がどれ程嬉しかっただろう。
「あ…。」
ある事を思い出したルフィは持っていた肉をひと口で平らげると、ガサゴソと自分のポケットを漁り出した。