第23章 鳥籠を飛び出して
ドフラミンゴ side
本当に馬鹿な女だ。俺を救いたい?何も知らないアマちゃんがよく言えたもんだ。
「フッ…!」
だが、何故だろうなぁ…お前の笑顔を見ると不思議と救われた気持ちになった。優しく俺を包み込むお前の腕が愛おしく…そして憎らしくもあった。
(白いアザレアか…。)
手紙の端に添えられた花はまるであいつの心みてぇに、綺麗で真っ白だ。
「っ。」
「…この軍艦も、もう古いかねぇ。」
ポタリと手紙に1滴の水が跳ねた。雨漏りかと天井を見上げても…それは俺の頬だけを濡らし顎を伝いまたポタリと滴が落ちる。
「今日は天候も酷い。雨漏りするかもしれないが…我慢しとくれよ。」
俺が握り締めている手紙はポタポタと落ちる水滴で文字が少し滲んでしまっている。折角の手紙が台無しだぜ…。
「ここは薄暗い。…あんたの顔なんて、誰も見えちゃいないよ。」
ふぅと溜め息を漏らすとおつるさんは顔をうつ向かせた。本当に…この人には敵わねぇなぁ…。
ードフィは私のものでしょ?ー
なぁ、花子。俺はお前の事、結構気に入ってたんだぜ?馬鹿で真っ直ぐで…気付けば俺の中にどんどん踏み込んできやがる。
「…悪いが毎日新聞を差し入れてくれよ。それで退屈はしねぇ。」
ー貴方の側を離れないわ。ー
お前が側にいなけりゃ退屈で俺は腐っちまいそうだ。
(なぁ、花子。もしまたお前に出会う事が出来るなら…。)
ードフィ。ー
変わらぬ笑顔で…俺の名を呼んでくれるか…?
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花子 side
船尾に座りもう見えなくなった"ドレスローザ"の方を見つめているとロビンちゃんが声をかけてきた。
「参加しなくていいの?」
「うん。」
甲板では勝利の宴と称してどんちゃん騒ぎしている。あれに付き合ってたら私なんてすぐに潰れてしまう。
「その花…アザレアね。」
「うん、可愛いでしょ?」
私の掌には真っ白な花が握られている。そろそろあの手紙は届いたかな?
「…貴女にとって…ドフラミンゴはどんな人だった?」
「…独りぼっちの子供みたいな人かな。」
ねぇ、ドフィ。貴方は許されない事をしたわ。沢山の人を苦しめ、悲しませた。でも…私は…。
(貴方に愛されて…幸せでした。)
私の手を離れた白いアザレアの花は…私の想いと共に静かに海へと消えていった。