第23章 鳥籠を飛び出して
夜も更け辺りが暗くなった頃、玄関の扉の窓に何者かの影がぼんやり映った。即座に臨戦態勢に入ったゾロに室内には緊張が走る。しかし、そんな空気を気にする事なく中に入ってきた訪問者にロビンの声が跳ねた。
「サボ!」
「よっ!」
「花子?!お前…!」
「皆!無事だったんだね!」
サボに抱えられた花子を見つめゾロはあからさまに安堵の表情を浮かべる。口ではああ言っていたが、彼も彼女の事を心配していたんだと、素直じゃないゾロにフランキーがそっと口元を緩めた。
「花子…貴女、足…。」
「あぁ~…。」
ふとスカートから覗く足首に目を向けたロビンに花子が気まずそうに視線を逸らす。何かを察した彼女はそれ以上何も言わず、自分の隣に下ろす様にサボに頼んだ。
「ありがとう、サボ君。」
「これぐらいお安い御用さ。むしろ、役得だ。」
「…。」
「顔が怖ぇぞ。」
お礼を伝える花子の頬をサボがそっと撫でる。仲の良さそうな2人の雰囲気にゾロがムッと顔を顰め、そんな彼の様子にフランキーが可笑しそうにからかった。
「…お前等知り合いか?」
「ええ、ルフィのお兄さんよ。」
「はあ!?」
「サボ君、そうなの?!」
「何でお前も驚いてんだよ!」
「ほらよ、海賊狩り。土産だ。」
サボは持っていた酒瓶を無造作にゾロに投げ渡す。初対面の相手に警戒していたゾロだが、ルフィの兄と聞けば警戒を解くしかない。加えて喉から手が出る程欲しかった酒を渡されればイチコロだ。
「ルフィの兄貴だぁ?俺ぁてっきり火拳だけかと…他にもいたのか。」
「あぁ、もっともルフィも今日まで俺が生きていたなんて知らなかっただろうが。」
「あ?そりゃどういう意味だ?」
「サボ、立ち話もなんだし座って。」
「あぁ、そうさせて貰うよ。」
小さな家に大の大人が転がって寝ているのだから座る場所はない。ベットで鼾をかいているルフィの隣に遠慮がちに腰を下ろすと、サボは優しい微笑みで彼を見つめる。
「ルフィを起こそうか?」
「いいよ、顔を見に来ただけだ。」
エースだけではなくもう1人兄がいたとは。珍しそうに自分を見つめるゾロ達にサボは頬を掻きながら、幼い頃の事を話し始めた。