第23章 鳥籠を飛び出して
歓声が鳴り止まぬ中、ゾロ達と合流したローは錦えもんが連れている赤髪の男に目を向けた。彼はカン十郎と名乗り、錦えもんが探していた"ワノ国"の侍の様だ。
「おい、他に女はいなかったか?」
「む?いや、他には誰もおらんかったが。」
「くそっ…!」
「トラ男君!」
立ち上がろうとしたローの身体をロビンが支え、離せ、花子を探しに行くと言うローを宥めていると、ヴィオラが口を開いた。
「取り敢えず、王宮に行きましょう。そこに彼女もいる筈だから。」
「…チッ!」
まずは身体を休めないとと言う彼女の言葉にローは舌打ちを溢し大人しくそれに従った。
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"ドレスローザ"東の町にあるカルタの丘。美しい花が咲き誇る先に一軒の家があった。この家はかつてキュロス達が一時の幸せな日々を過ごした場所。
「すまんな。私の勝手な都合で。毛布を用意したから使ってくれ。」
「ルフィはどうする?」
「この国1番の功績者だ。ぜひベッドを使ってくれ。」
乱暴にルフィをベットに転がしゾロがキュロスに酒を所望する。つい先程まで話していたのに彼はしっかりと毛布を掛け眠りに付いていた。
「ってもう寝てやがる!どんだけだ!」
「相当、疲れていたのね。」
腹が減ったと嘆くウソップをよそにゾロは酒は無いのかと辺りを漁り始めた。
「俺は花子を探しに行く。」
「お前はそればっかだな…。」
「あいつは今動けねぇんだ。海軍にでも見つかったら…っ!」
「ほら、言わんこっちゃねぇ!」
鬼哭を杖に立ち上がろうとしたローは身体の疲労もあってかその場に崩れ落ちる。呆れた顔でウソップが彼に近付くと、酒を諦めたゾロが口を開いた。
「あの女もいるんだ、大丈夫だろ。」
「てめぇには関係ねぇ。」
「大体、そんなボロボロでもし海軍にでも出くわしたら守りきれんのか?」
あの女とはヴィオラの事だろう。キュロスの家に向かうと決めた時、彼女は花子を見付けたらここに連れてくると約束した。ゾロの正論にローはぐっと言葉を詰まらせた後、諦めた様に鬼哭を枕にするとものの数秒で眠りに落ちた。
「って!こいつも早ぇなっ!?」
「昼間の戦いを考えれば当たり前よ。」
「…だな、俺も寝るかなぁ~。」
干し肉で小腹を満たしたウソップも大きな欠伸をした後、ルフィの隣に横になった。