第22章 動き出した歯車
花子 side
私の肩を掴んでいたルフィ君の視線が足首に移る。嫌なもの…見せちゃったな…。
「…誰だ?」
「え?」
「誰がお前にこんな事をした!?ミンゴか!?」
私を見つめるルフィ君の顔は今までで1度も見た事が無いくらい怒っていた。私の事で怒ってくれていると思うと嬉しくて、思わず彼の頬をそっと撫でた。
「誰のせいでもないの…。私が…望んで此処にいるの…。」
ーお前は俺の側を離れるな。ー
初めは凄く怖かった…。いつか殺されるんじゃないかって。でも…あんな悲しそうな彼を私は見捨てる事が出来ない。
「折角来てくれたのに申し訳無いけど…私は大丈夫「嘘だ!」
「本当は此処から逃げてぇんだろ!?おっさんの所に帰りてぇんだろ!?」
「何を言って…私は、自分からドフィの側に…!」
私がここにいれば、ドフィはジルさん達に何もしないと約束してくれた。
「だったら…だったら、何で泣いてんだよ!?」
「…え?」
「本当は寂しいんだろ!?あの島に戻りてぇんだろ!?」
そっと頬に触れると目から溢れ出した涙に濡れている。何で私は泣いているの?
「ジルのおっさんに会いてぇんだろ!?」
「ちがっ…私は…。」
自分で望んだ事、我が儘なんて言えない。それに…私が彼の側にいないと…!
ーお前は自分が思った事を自由にしていいんだ。ー
「…ぃ。」
ふとジルさんの言葉が頭に浮かび気付けば私はルフィに縋る様に彼の胸の服を掴んでいた。
「ジルさんにっ…会いたいよぉっ…!」
帰りたいっ…!ジルさんの…皆が待つあの島にっ…!
「っ?!」
ふと突然私の唇に柔らかいものが触れた。驚いているとルフィが私の頭に宝物だと言っていた麦わら帽子を被せる。
「分かった!」
キラキラと輝く笑顔の彼を見つめ私はまたポロポロと涙を溢れさせた。
ーお前は俺を裏切るな。ー
ごめんね、ドフィ…。貴方の側にいられない私を…許して…。