第22章 動き出した歯車
王宮の【スートの間】、そこにローは連れて来られた。麦わらの一味と同盟を組み"SMILE工場"の破壊。しかし、全てはドフラミンゴの掌で踊らされていた。
「フフフッ、随分と引っ掻き回してくれたな…糞餓鬼。」
「…。」
「だが、お前は俺の可愛い元部下。…ロー、取引といこうぜ。」
ハートをモチーフにした椅子に座らされているローはぐっと眉間に皺を寄せる。彼を嘲笑うかの様にドフラミンゴはニヤリと口角を上げた。
「お前が俺のファミリーに入るってんなら、お前の仲間には手を出さない事を約束しよう。」
「…お前の言葉を信じろと?」
「ひでぇ言い様だなぁ。…お前だって嬉しいだろ?あいつの…コラソンの椅子に座れるんだからな。」
「っ!?」
コラソン。その名前を口にした瞬間、ローは鋭い眼光でドフラミンゴを睨み付ける。今にもドフラミンゴに飛び掛かって行きそうな勢いだが、椅子に設置された海楼石の手錠によりそれは叶わない。
「…若、連れてきました。」
「待ってたぜ、入れ。」
扉を叩く音が聞こえベビー5が部屋に入ってきた。彼女に抱えられている人物にローは目を見開いた。
「ごめんね、ベビーちゃん。重かったでしょ?」
「大丈夫よ。」
深く椅子に座っているローに花子はまだ気付いていない様子。ベビー5にお礼を伝えると彼女をドフラミンゴが受け取り抱え上げた。
「ロー…君…?」
「花子…。」
「フフフッ!そうか、お前等は顔見知りだったな。紹介するぜ、俺の女の花子だ。」
「?!」
愛おしそうに花子の頬にキスを落とすドフラミンゴの言葉にローは絶望にも似た喪失感を感じた。久し振りに見た花子は以前よりも美しくなっていた。花子に対するドフラミンゴの態度で、彼がどれ程彼女を大切にしているかが分かる。
「ロー!ちゃんと挨拶をしなさいっ!」
「…。」
「…ロー?」
ローの頭を叩いたベビー5は首を傾げる。いつもならこの後、自分を無言で睨み付け泣かされてしまうのだが。今のローは時間が止まった様にピクリとも動かない。
「フフフッ、そんなに驚く事か?言っただろ…こいつは俺のものだと。」
頭を撫でられドフラミンゴに凭れ掛かる花子の姿にローは顔を歪める。しかし、何故かローには彼女が泣いている様に思えた。