第22章 動き出した歯車
花子 side
「ドフィ~?どうしたのぉ~?」
「…。」
仕事だと朝方出ていった後、戻ってきてからずっとこんな調子。私を後ろから抱え込み潰されるんじゃないかってぐらい、ぎゅう~って抱き締めている。
「ねぇ…お願い、ドフィ。顔が見たいの。」
お腹に回る腕をポンポンと叩くと少し力が緩んだ。私は彼の膝を跨ぐと向かい合う体勢になり、そっとサングラスを外した。
「何かヤな事あった?」
両手で頬を包み込み彼の目を見つめると、その瞳の奥には悲しみの色が入り交じっている。
「花子…。」
「うん。」
「花子っ…!」
いつも自信満々なドフィからは考えられないくらい、その声は弱々しかった。縋る様に私を抱き込み何度も名前を呼ぶ貴方は…独りぼっちで怯えている子供の様…。
「俺の側から…いなくならないでくれっ…!」
「側にいるよ…。」
ねぇドフィ…。貴方が私を必要としてくれているのは、やっぱりコハクがいるから?もし、コハクがいなくなってしまったら私は必要ないのかな?
「お前は俺のものだ。」
「貴方は私のものよ。」
私に向けるその優しい目も、注がれる愛情も全て無くなってしまうのかな?
(でも、それは私も同じ事か…。)
お互いの利害関係から生まれた感情。貴方が囁く愛が偽りだとしても…私は…。
ーーーーーー
"ドレスローザ"に着いた麦わらの一味はその活気ある町並みに驚きを隠せずにいる。人々は笑顔に溢れ町の中心部に繋がる道の花々綺麗に手入れされ美しさを保っている。
「うまそぉ~!」
「いいいいっ匂い~!」
立ち並ぶ店からは食欲を唆る匂いにルフィが釣られ、町を歩けば美しい女達の情熱的な踊りとその芳しい香りにサンジが誘われ中々先に進めずにいた。
「おい、お前等!目移りするのはいいが目的を忘れんなよ!」
「ハッ!そうだ!囚われの花子ちゃんが俺の助けを待ってんだっ!待っててねぇ~!花子ちゅわぁんっ♡」
「あほ。」
(ぜってぇ、花子にチクってやる。)
フランキーの言葉に正気を取り戻したサンジだったがものの3秒でまた誘惑に負けていた。そんな彼の姿にゾロはいつもの様に悪態を付き、ローは醜態を花子にバラしてやると心に誓った。