第22章 動き出した歯車
サンジ side
花子ちゃんが"ドレスローザ"にいる。人造悪魔の実なんて思い付くイカれた野郎の所に…。酷い事されてねぇか?1人で泣いてないか?
(その前に確認しておく事があるな。)
俺は煙草に火を着け船首に立ち1人海を見つめているローに声を掛けた。
「…ちょっといいか?話がある。」
「黒足屋、何の用だ。」
「お前、さっき花子ちゃんは自分の船に乗っていたって言ったよな。」
「…あぁ。」
「俺は彼女から話は聞いた。違う世界から来た事も、お前の船に乗っていた事も。」
俺の言葉に一瞬驚いた顔を見せるもすぐにいつもの仏頂面に戻り、そうかとだけ呟いた。
「お前の名前を聞いた時、もしかしてって思った。」
ーロー君っ…。ー
切なく海を見つめ呟かれた名前。何で俺じゃない?花子ちゃんから囁かれる名前が何で自分じゃないのかと何度も思った。
「何故…彼女を裏切った?」
「…俺は今でも花子が好きだ。」
「っざけんなよっ!?」
ー彼の幸せが私の幸せなの…。ー
だったら…!だったら何で彼女はあんな悲しそうに笑うんだよ!好きな女にっ、何であんな顔させんだよっ!?
「俺は…花子ちゃんが好きだ。」
「あ"ぁ?」
「胸糞悪いがお前と彼女が恋人同士だったのは事実だ。だが、それはもう過去の事だ。」
俺は彼女の笑顔を守りたい。彼女の悲しみに寄り添い少しでも癒してやりたい。
「俺が、彼女の居場所になる。」
「…うるせぇ。」
目を見つめそう言い放つとローは見た事もねぇぐらいの怒りを瞳に宿し俺の胸倉を掴んできた。
「てめぇに何が分かる!?大切な女が姿を消し死んだと知った時の俺の気持ちがっ!生きていると分かったっ、なのに俺の手をすり抜け離れていく気持ちがっ…てめぇに分かるのかよっ!?」
「…。」
「花子は俺のもんだ、誰にも渡さねぇ。もし奪おうってんなら…。」
容赦はしねぇぞと、低い声で唸るローに俺は何故かホッとした。
「…何だ、ちゃんと言えんじゃねぇかよ。」
「あ?」
「その気持ち、ちゃんと伝えてやれよ。」
呆気に取られた顔で胸倉を掴むローの手を払い除け俺はゆっくりと煙を吸い込んだ。
(良かったな…花子ちゃん。)
君は…ちゃんと愛されてたんだよ。