第20章 愛と情熱の国
ジルは病院の1室で椅子に座りベットに横たわる人物を見つめていた。その頬は青白く無機質に聞こえる心電図の音だけが部屋に響く。
「…。」
ージルさん、大変だ!ー
ーどうした?ー
ーミアがっ!コハクがミアを連れて戻って来たんだ!ー
コハクの背に乗ったミアは生きているのかも怪しかったが治療により一命は取り留めた。
「…なぁ、ミア。何があったんだ?」
ベットに横たわる彼女は本来なら花子といる筈。状況を知りたくもそれを知るミアは眠り続けている。
「っ。」
「ミア?」
ピクリとミアの目元が一瞬震えジルが声を掛けると彼女の瞼がゆっくりと開いた。
「ジル…さん?」
「目が覚めたかっ!待ってろ!今、先生呼んでくっからっ!」
まずは彼女の身体が第一だとジルは急いで病室を出ていった。
ーーーーーー
医師の診断も終わり落ち着きを取り戻したミアにジルは身を乗り出す。
「ミア、何があった?お前は花子と一緒にいたんじゃないのか?花子はどうした?」
「親父、そんな一気に聞いたらミアも混乱するだろう。」
捲し立てる様に言うジルをアギトが宥めると、ミアは申し訳なさそうに眉を下げゆっくりと口を開いた。
「ジルさん、ごめんなさい。実は…。」
ミアは全てを話した。自分がドフラミンゴの部下であった事、彼の命令で赤髪の縄張であるこの島に潜伏していた事。そして…彼の目的がコハクであり花子であった事。
「だが、何でドフラミンゴは花子とコハクを?」
「コハクは…伝説にあるスカイオルカなんです。」
「スカイオルカ?」
「スカイオルカは神に使えし神獣で、王となる者を玉座に導くと言われています。」
まるで夢物語の様な話にジルもアギトも驚きを隠せずにいた。
「…でも、本当に玉座に導くのはスカイオルカじゃ無いんです。」
「どう言う事だ?」
「スカイオルカを従える者。その者が王たる人物を導くのです。」
「おい…それって、まさか…。」
ジルは眉間に皺を寄せた。そんな筈はない、そんな事があってはならないと。
「…花子ちゃんが、その人物なんです。」
ージルさんっ!大好きっ!ー
涙を堪え必死に明るく振る舞っていた花子の声がジルの頭に響く。