第20章 愛と情熱の国
花子 side
その後の事はよく分からない。気付けば私はドフラミンゴさんに抱えられ自分の部屋に戻っていた。
「…どうして?」
「あ?」
私に覆い被さるドフラミンゴさんを睨み付けると彼の眉がピクリと動く。
「何で、彼を殺したのよ!彼は何もしてないじゃないっ!」
「…。」
彼は自分の仕事に誇りを持っていた!お城で仕事をさせて貰える事を誇りに思うって!いつか一人前の庭師になるんだって!
ーいつか花子さんに僕が手入れした花を見て欲しいです!ー
凄く楽しそうに話す彼の笑顔が頭から離れない。涙を流すのを必死に堪えていると、ドフラミンゴさんがガッと私の頬を掴んだ。
「お前は、あの餓鬼が純粋にお前を慕っていたと思うのか?」
「何…言って…。」
「若ぇ男に言い寄られてさぞ気分は良かっただろうなぁ。」
身体を離したドフラミンゴさんは私をうつ伏せにさせスルリと腰を撫でる。その手付きは優しいものなのに冷たく突き刺さる声に身体が強張る。
「折角、優しくしてやってたのに…目を離すとお前は俺の側から離れて行くんだろうなぁ。」
「あ…。」
穏やかな声の中に含まれる怒り。ヒヤリと足首に何かを押し当てられ恐怖に起き上がろうとした時。
「自由に飛び回る翼なんて…いらねぇよな?」
「っ?!ぃやあぁああぁっ?!」
火に焼かれる様な熱と激痛に頭が真っ白になった。痛い痛いと暴れ叫ぶ私をドフラミンゴさんは仰向けにさせ身体を押さえ付ける。
「いたいっ!やめてっ、やだぁっ!」
「赤いアネモネの花言葉を知ってるか?」
「やだやだやだっ!お願いっ、い"たいよぉっ!」
ボロボロと泣きじゃくる私の事なんて気にも止めずドフラミンゴさんは狂気染みた笑みを浮かべる。
「【君を愛す】だ。」
「っ?!」
「あの餓鬼もお前に惚れなけりゃ死なずにすんだのになぁ。」
耳元で囁くドフラミンゴさんの声に一瞬意識を取り戻した様に冷静になる。
「わたしの…せい…?」
「あぁ、お前に関わらなけりゃ…誰も死なずにすんだんだ。」
ミアさんも…ニムル君も…。
(エース…君も…?)
皆…私と関わったからいなくなってしまったの…?
「だか、安心しろ。俺はお前の側からいなくなったりしねぇよ。」
甘く、歪んだ言葉が私を縛り付ける。
「だから…お前も…俺の側を離れるな。」