第20章 愛と情熱の国
ドフラミンゴ side
ー私の事を考えて選んでくれたその気持ちが嬉しかっただけ。ー
(あいつの事を考えて…か。)
花子の言葉が頭から離れねぇ。女なんて服や宝石を与えれば喜ぶもんだと思ってた。だが、あいつは雑草同然の花を貰って嬉しそうにしていた。
(あいつが喜びそうなもん…。)
今思えば俺は花子の事をよく知らねぇ。名前と年齢だけ。あいつが好きそうなもんや喜びそうなもんなんて何も…。
「あははっ!」
「あ?」
ベビー5辺りに聞いてみるかと考えていると花子の笑い声が聞こえてきた。ふと窓から下を覗けば誰かと楽しそうにしている花子の姿が見えた。
(あいつか?)
最近よく話すと言っていた庭師見習いの男は。歳は15、6ぐらいか?餓鬼じゃねぇかと何処かでホッとしている自分に疑問を覚えていると、餓鬼が花子に何か差し出した。
「ありがとう!」
「!」
餓鬼が花子に渡したのは赤いアネモネの花。嬉しそうにそれを受け取る花子をそいつは顔を赤くし照れ臭そうな笑顔を見せる。
「赤い…アネモネねぇ…。」
中々粋な事をするじゃねぇか。ニヤリと笑みが溢れるのとは裏腹に、俺の中にドロドロとした黒い感情が流れ込んできた。
ーーーーーー
花子 side
(ニムル君、遅いなぁ…。)
昨日、アネモネの花束を貰った時彼から今日も此処へ来て欲しいと言われた。
ー僕っ!花子さんにお伝えしたい事があるんです!ー
「ふふっ、チワワみたいだったな。」
顔を真っ赤にして緊張からかぷるぷると身体を震わせ大きな目を潤ませていた彼は小型犬を思わせる程可愛かった。
「花子。」
「ドフラミンゴさん?」
ベンチに座り思わず顔を綻ばせているとドフラミンゴさんが大きな身体を揺らし近付いてきた。
「お前に用事があってな。…ちょっと来い。」
「でも…。」
「待ち合わせしてんだろ?安心しろ、大丈夫だ。」
何が大丈夫なのかよく分からないけど急用かもしれないし、もしすれ違いになってしまったら今度謝ろう。そう思い私はドフラミンゴさんに連れられるまま彼の後を付いていった。