第20章 愛と情熱の国
花子 side
「最近、若様とはどうなの?」
「え?」
ある昼下がりベビーちゃんとお茶をしていたら突然聞かれキョトンとすると、彼女はフルーツタルトにフォークを刺しながら私を見つめる。
「別にいつもと変わらないけど。」
「うっそ!何で?!」
「いやいや、逆に何で?」
驚いた顔をしたベビーちゃんはタルトを食べたフォークで棚にある花瓶を指した。…行儀悪いよ。
「花なんか貰ってそんな事あるわけ無いじゃない!」
「あぁ、あれね。」
ベビーちゃんが指した花瓶にはピンクのカーネーションとかすみ草、そしてエリンジウムが飾られている。
「これは庭師見習いの子から貰ったの。」
「庭師見習い…もしかしてニムル?」
「ベビーちゃん、知ってるの?」
ニムル君とは少し前に会った庭師見習いの男の子。たまに話をしている内に仲良くなって最近は花をプレゼントしてくれる。
「ふふっ。可愛いよね、カーネーションって。彼若いし私の事お母さんとでも思ったのかな?」
「…。」
緊張した顔で花を渡す彼は凄く可愛らしくてキュンとしちゃう。思わず笑っているとベビーちゃんは心底呆れた顔で重い溜め息を漏らす。
「…可哀想。」
「え?何が?」
「と・に・か・く!もう花を貰うのは止めておきなさい!」
「えぇ…。」
何故かもう花を貰うなこの花も捨てろと言うベビーちゃんに少し戸惑ってしまう。捨てるのは流石に気が引ける。
「折角くれたのに…。」
「これはニムルの為でもあるのよ!」
「…どう言う事?」
ますます訳が分からず首を傾げるとベビーちゃんは煙草に火を着け真剣な面持ちで口を開いた。
「…若様はね、独占欲が強いのよ。」
「そりゃあ…。」
そうだろうね。お前の物は俺の物、俺の物は俺の物。むしろ、誰の物でも俺の物って思ってそうだし。
(全然分かってないわね…。)
「ベビーちゃん?」
頭を抱えうんうん唸るベビーちゃんに声を掛けると、このお馬鹿と頬っぺを抓られた。何故?
ピンクのカーネーション
【感謝】【暖かい心】【上品・気品】【熱愛】
かすみ草
【感謝】【幸福】【無邪気】
エリンジウム
【秘めた思い】