第3章 初上陸
マルコ side
この島にはオヤジの酒を調達するのに立ち寄った。馴染みの店に足を運ぶとそこには先客がいた。
「お嬢さん、名前は?俺はマルコだ。」
「花子です。」
花子と名乗ったお嬢さんは、随分と落ち着いた雰囲気で人好きそうな笑顔を浮かべる。だが、その顔が何処か憂いを帯びていて軽い気持ちで何があったのか聞いてみた。
「…聞いてくれます?」
目を潤ませ見上げる彼女の顔は俺の加虐心を掻き立て、2つ返事で頷いたが今はそれを後悔しているよぃ…。
「はぁ~…そんなに綺麗な子がいいですか!そんなにボンッキュッボンッがいいですか!」
「ほら、水飲め。」
話を聞くとどうやら好いた男が目の前で違う女とキスしてたんだと。更にその男は花子と目が合うと試す様な笑みを浮かべたときたから、その男も達が悪いねぃ。
「お兄さん、優しい…。」
「そうかぃ?」
「私もあれくらい綺麗だったらなぁ…。」
マスターに水を頼み差し出せば意外にも花子はそれを受け取り飲み干した。自分の限界は分かってるようだねぃ。
「花子も可愛いと思うよぃ。」
「お世辞でも嬉しいですぅ~。」
「世辞じゃないよぃ。」
実際に花子の見た目は可愛いと思う。小柄だが出るとこは出てるし、くりっとした大きな黒い瞳は守ってやりたくなる様な欲を掻き立てる。
「こんな可愛い子を泣かせる何て…その男は馬鹿だねぃ。」
まぁ、好みなんて人それぞれだ。そう思いカウンターにうつ伏せる花子の髪を耳に掛けると不意に俺の方に顔を向けた。
「お兄さん…優しいね~…。」
「!」
ふにゃりと笑い俺の手に擦り寄る花子の顔を見た時、ドクリと俺の心臓が脈打った。そして本能が叫ぶ…欲しいと。
「…花子、この後は空いてるかぃ?」
「マルコさん…。」
「ん~…もう少し飲みたい気もしますがそろそろ帰ります。」
何か言いたげなマスターを無視して花子に目を向けると、本当に自分の限界を分かっているのかすっと身体を起こした。
(じゃあ、送ってくよぃ。女の1人歩きは危ねぇ。)
(やっぱりお兄さん、優しい…。)
(マルコさん。)
(…分かってるよぃ。)チッ