第3章 初上陸
「だからって、ちゅうしてるところ見せなくてもいいじゃない!お兄さんもそう思いません?!」
「…そうだねぃ。」
ぐいっと酒を飲み干しまた酒を頼む花子に男は苦笑いを浮かべ相槌を打つ。先に帰った筈の花子が何故酔っ払い管を巻いているかと言うとそれは数刻前に遡る。
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船に戻る道中、花子は煌びやかな夜の町を1人寂しく歩いていた。そんな中、1軒ポツリと明かりの灯った建物が目に入る。吸い寄せられる様にその建物に足を向け看板を見るとBarと記されていた。
「…こんばんは。」
「いらっしゃいませ。」
カランとドアベルが鳴り中を覗くとそこはカウンターだけのこじんまりとした店内。そして、カウンター内では50代後半ぐらいの男が花子を出迎えた。
「あの…1人でも大丈夫ですか?」
「これは可愛らしいお嬢さん。こんな寂れた店で良ければ1杯どうぞ。」
笑顔で迎い入れてくれたマスターにホッと胸を撫で下ろし花子は腰を下ろす。酒を頼むとマスターは手際よく酒を作り花子に差し出した。
「ありがとうございます。良かったらマスターも飲んでください。」
「ありがとうございます。」
前もこんなやり取りあったなぁっと懐かしくなった花子は、意外とフランクなマスターとの会話に花を咲かせていた。
「へぇ~、この店に客がいるとは驚いたよぃ!」
「失礼ですよ、マルコさん。」
「悪い、悪い!隣いいかぃ?」
「どうぞ。」
ドアベルが鳴り目を向けると何とも個性的な髪型をした男が入ってきた。マスターの態度から常連なのだろう。マルコと呼ばれた男は花子の隣に腰を下ろすと、慣れた様子で酒を注文する。
「んで?お嬢さんは何でまたこの店に?」
「ん~…何か飲みたい気分だったんです。」
本当は帰らなければいけないのだけれど、この時何故か花子はそうしたくなかった。
「へぇ…そりゃまた何で?」
「…聞いてくれます?」
本の興味本意だったのであろう。それがあんな事になるとは男も…花子も予想にもしなかった。
(本当にズルい!イケメン、ズルい!)
(よぃよぃ…。)
(お兄さんもイケメンだけど!)
(…ありがとよぃ。)