第20章 愛と情熱の国
ドフラミンゴは虫の居所が悪かった。酒を飲み女を抱いても治まる事の無い渇き。この苛立ちの遣り場が見付からず向かったのは花子の部屋。
「すぅ~…。」
時間はもう深夜を回っている。部屋に入れば案の定花子は穏やかな寝息を立て眠っていた。
「呑気なもんだな。」
初めは怯えた仔猫の様に威嚇していた花子も今ではファミリーの皆とも打ち解けている。覆い被さる様にベットに乗り上げれば彼の重みでギシッと音を立てた。
「んむ…なに…?」
「フフフッ!よぉ、花子ちゃん。」
ベットが沈む感覚に目を覚ました花子は微睡みの中、自分の顔を覗き込んでいるドフラミンゴを見つめる。
「…寝れないんですか?」
「あぁ、どうも寝付けなくてな。付き合ってくれるか?」
その言葉の意味が何を表しているのか分からない程子供でもないだろうと、ドフラミンゴが花子に顔を近付けた時、彼女は彼の顔を自分の胸に抱き込んだ。
「…おい。」
「こうやって心臓の音を聞くと落ち着くんですよ。」
優しく頭を撫で背中を叩く花子の行動に目を見開いた。トクトクと聞こえる心音。石鹸の香りと共に感じる甘い匂い。
「大丈夫…大丈夫。」
だんだんと睡魔に襲われ落ちていく瞼。ドフラミンゴの脳裏に浮かぶのは幼い頃の母の記憶。
(母上…。)
「きっと…明日も良い日になりますよ…。」
すぅ~と聞こえる寝息を子守唄にドフラミンゴもゆっくりと目を閉じた。
ーーーーーー
(何だ、これは…。)
朝、目が覚めた花子はこの状況に目を疑った。自分を抱き枕の様にして眠るドフラミンゴ。まず、何故彼がここにいるのか。
(取り敢えず、起きないと。)
彼を起こさない事には状況が把握出来ないと身体を離そうとした時、ぐっと引き寄せられキツく抱き締められた。
「ちょっ「まだ…眠いえ…。」
(え?)
花子の胸に擦り寄りポツリと呟いたドフラミンゴは、少し幼く見えサングラスで隠れた目元も何処と無く穏やかに見える。
「…仕方無いなぁ。」
今日はのんびりしようと眠るドフラミンゴの頭を優しく撫で花子も静かに目を閉じた。
(ところで何でここで寝てるの?)
(フフフッ!なかなか良い目覚めだったぜ。)
(ねぇ、勝手に入ったの?)