第20章 愛と情熱の国
花子 side
「フフフッ!随分使用人を困らせているみてぇだな。」
「ん?」
あの日、土下座をして以降私はたまに自分の食事は自分で作る様にしている。
「別に私はここのファミリーじゃないし、自分の事は自分でやるの!」
今まであくせく働いていたからずっとやる事無いとどうしていいか分からなくなっちゃう。
「本当に見てて飽きねぇな。」
「あぁっ?!私の出し巻き玉子っ!?」
テーブルに頬杖を付いていたドフラミンゴさんはフォークで私のお皿からおかずを奪うと、そのまま大きな口に放り込んだ。
「酷いっ!最後の一切れだったのにっ!」
「…ふむ。」
最後の楽しみに取っておいたおかずを咀嚼し何か考える素振りを見せるドフラミンゴさんを、恨めしそうに見つめていると彼の大きな手がポンと頭に置かれた。
「次から作る時は2人分作れ。」
「は?」
分かったなと私の頭を撫でドフラミンゴさんはケラケラと笑いながら部屋を出て行った。
「…いや、他に言う事あるよね!?」
感想とかさ?!その前に謝れっ!
ーーーーーー
(まったく、何だったのよ。)
お城の中を散策している私は先程のドフラミンゴさんの行動に頭を捻る。只の気紛れか物珍しさか…本当に分からない人だ。
「ん?庭?」
適当に歩いていると色とりどりの花が咲き誇る庭園に出た。
「綺麗…。」
近くにあったベンチに腰を下ろし眺めていると、先程のモヤモヤが嘘の様に晴れ穏やかな気持ちになる。
(ジルさん達…元気かな…。)
エリーさんは無理して無いかな?お店は大丈夫かな?お客さん達は飲み過ぎてないかな?
(私の事…心配してくれているかな?)
鼻がツンと痛むのを感じふと視界がぼやける。切なくなる胸にきゅっと唇を噛み締めていると、ガサッと枝を掻き分ける音が聞こえた。
「どうかしたんですか?」
「えっ?」
思わず顔を上げると15歳ぐらいの男の子が驚いた顔をして近付いてきた。
「泣いて…いるんですか?」
「あ…。」
ポロリと頬を伝う涙を慌てて拭っていると彼はそっと私にハンカチを差し出してくれた。
「どうぞ。」
「っ。」
ポロポロと溢れ出す涙を止める術が分からず只泣いているだけの私に、彼は柔らかく微笑みそっと涙を拭ってくれた。