第19章 桃色鳥にご注意を
花子 side
痛む頭を抱えているとまたあの声が聞こえてくる。
ー花子…!俺の大事な花子っ!ー
私はこの声を知っている…。
「コハク…?」
何故か分からないけどコハクが私を呼んでいる気がした。そんな時、何かがぶつかる様な音と共に部屋が大きく揺れる。
ー…殺してやるっ!ー
「っ!コハクッ!」
「花子ちゃんっ!?」
ミアさんの制止の声にも耳を貸さず私は弾かれた様に部屋を飛び出した。誘われる様に外に出ればそこは海の上で、どうやら私は船に乗っていたみたい。
「おいっ、何とかしろっ!?」
「だが、若様からは殺すなと言う命令だっ!」
「じゃあ、どうすればっ?!」
慌ただしく甲板を走り回る船員達。また何かがぶつかる衝撃と大きく上がった水飛沫に駆け寄ると、コハクが何か訴える様に嘶いている。
ー花子を返せっ!さもなくば、貴様等全員食い殺してやるっ!ー
「少し弱らせるぐらい大丈夫だろ!」
「?!」
1人の船員がコハクに銃口を向けた。私は慌てて目の前に立ちはだかると必死に彼に訴えた。
「止めてっ!コハクを傷付けないで!」
「邪魔をするな!」
「私が止めるからっ!だからっ!」
私の必死の説得も虚しく船員の人達はコハクに攻撃しようと銃を構える。お願いっ…!誰かっ!
「面白ぇじゃねぇか。」
「若様っ!」
ミアさんの隣にいる人は落ち着いた声で船員達を止める。確かこの人は…。
「ドフラミンゴさん?」
「よぉ、花子ちゃん。目が覚めたんだってな。」
ニヤニヤと笑みを浮かべるドフラミンゴさんは大きな身体を屈ませ私に顔を近付ける。身長もあるけど本当に威圧感あるなぁ。
「俺としても無闇に生き物を傷付けるのは気が引ける。…が、船を潰されるとなると別の話だ。」
「っ!」
サングラス越しの彼の目は俺の言いたい事は分かるよな、と言っている気がした。何とかしなくちゃコハクが殺される…!私は無言で頷くと船から身を乗り出しコハクを見つめた。
「コハク、落ち着いて?」
何かを伝え様としているコハクの声は聞こえないけど何を言っているかは分かる。
「私は大丈夫だよ?だからお願い、コハクには傷付いて欲しくないの…。」
そう微笑みかければコハクは不満そうな顔をするけど、大人しく言う事を聞いてくれた。