第19章 桃色鳥にご注意を
花子 side
ジルさんの元に戻って来られた私はいつも通りの生活を送っている。…いや、ちょっと違うな。
ーお前、1人暮し禁止。ー
ーえぇーっ?!ー
勝手に島を抜け出した事で私はジルさんのお家に逆戻りとなった。心配もかけたし、何よりエリーさんが出産したので大変だろうと言う事もあっての事だ。
「でも30手前で親の脛を齧るのもどうかと思うよねぇ~?」
コハクに話し掛けると自業自得だと言いたげにじとりと私を見つめる。…はい、ごめんなさい。
(そう言えば、シャンクスさんがおかしな事言ってたなぁ…。)
私を送り届けたシャンクスさん達は数日滞在するとすぐに島を出ていってしまった。別れ際に彼は神妙な面持ちで私に声をかけた。
ー花子、コハクの事は余り周りには話さない方がいい。ー
ー何で?ー
ー…白い鯱は珍しいからな!お前もコハクが傷付くのは嫌だろう?ー
確かに白い鯱は珍しいからコハクを捕まえようとする人にがいるかもしれない。分かったと頷く私に安心した顔をするシャンクスさんの雰囲気が気になったけど…ま、いっか!
「コハク~、知らない船には近付かない様にしようねぇ~?」
コハクの鼻先を撫でると、首を突っ込んでるのはお前だろうって顔をされた。…ぎゃふん!
ーーーーーー
男は入り江沿いを1人歩いていた。普段は用意された宿でのんびりと過ごしているのだが、この時は何故かそんな気分になれなかった。
(フフフッ!この俺が散歩とはな。)
馬鹿な事をしていると思いながらも導かれる様に男は足を止める事はなかった。
「~!」
「…何だ?」
ふと人の声が聞こえ気になりその方向に足を進めると海に向かって何かを話かけている女の姿。普段なら気にせず通り過ぎる所だが、男は女が話し掛けているモノを見つめ目を見開く。
(白い鯱か…?)
ードフィ、この世界にはスカイオルカと言うとても美しい生き物がいるアマス。ー
遠い昔、母の話を思い出す。神に仕えし神獣。王となる者を玉座に導くと言われている伝説の生き物。
「フフフッ!たまには散歩もいいもんだな…。」
男はニヤリと笑みを浮かべると入り江を後にした。