第18章 2度目の航海
花子 side
「姐さんはお頭と副船長、どっちの女何ですか?」
「…は?」
レッド・フォース号で宴が開かれたある夜。1人の新米クルー君が徐に訪ねてきた。私は思わず、は?何言ってんの、こいつみたいな顔でまだ大人になりきれていない幼い顔立ちの彼を見つめる。
「…新米君や、突然どうしたの?」
「ヴィーダです!」
「…ヴィーダ君、突然どうしたの?」
ヴィーダと名乗った男の子は何故かキラキラと目を輝かせ私を見つめる。てか、姐さんって何?
「ヤソップさんが言ってました!姐さんはお頭と副船長を虜にした魔性の女だって!」
「…ヤソップさぁん?!」
「間違っちゃいねぇだろ!」
この人、完全に面白がってる!ケラケラと笑うヤソップさんを睨み付けると、ヴィーダ君は興味津々と言った様子でぐっと詰め寄ってきた。
(あ…結構可愛い顔してる。)
「それで、どっちなんですか?」
「んえ?」
「お頭も副船長もモテるのに…姐さんと出会って女遊びが無くなったんですよ!」
「「おい。」」
はぁ~ん…やっぱり2人はモテるのね。まあ確かに2人共イケメンだし、大人の色気も余裕もあるから引く手数多だろうなぁ。
「別にどっちとも付き合って無いよ。」
「え?」
「2人共凄く素敵だと思うけどそう言うんじゃないよ。」
2人の事は好きだし、頼りにもしてる。上手くは言えないけど恋人とかそう言うのとは違う気がする。
「成る程!姐さんは2人の女って事ですね!」
「…ん?」
「俺、感動しました!1人の男に縛られないその強欲さと自由さ!海賊の鏡です!」
「…私ディスられてる?」
まず私、海賊違うし。俺も頑張ります!と1人で盛り上がっているヴィーダ君に、頑張ってとエールを送るととても良い笑顔で頷かれた。
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宴会の話のネタは私が誰の女か、からシャンクスさん派かベックマンさん派に変わっていた。少し面倒になった私は宴を抜け出し1人甲板に出た。
「恋人…か…。」
ロー君といた時はそれでも構わないと思った。この世界で生きて行こうと…。
(私のいた世界とは全く違う…。)
人が売られ、本気の命の遣り取りが行われ誰かが死んでいく。私のいた世界とは常識も何もかもが違うんだと思い知らされる。
(私は…ここにいてもいいのかな?)