第18章 2度目の航海
レッド・フォース号はカームベルトを横断している。初めは危険だとベックマン達は止めたが気になる事があるとシャンクスの一声で決行された。
「コハク~!疲れてない?大丈夫?」
無風海域であるカームベルトを進むには自らの手で船を動かすしかない。そこで白羽の矢が立ったのがコハクだった。
「花子、元気そうだな。」
「あぁ、もうすっかり。」
あの日シャンクスの腕の中で泣いて以降、花子は元気を取り戻した。今も船を引くコハクに声をかけ笑顔を見せる彼女の姿にベックマンもホッと胸を撫で下ろす。
「しかし、本当に花子はカームベルトを渡って来たんだな。」
「正直俺も驚いている。」
カームベルトの海域は穏やかだが大型海王類の巣だ。海軍の軍艦でもない限り渡るのは容易ではない。しかし、今の今までレッド・フォース号は襲われる事なく海を渡っている。
「…ベック、スカイオルカって知ってるか?」
「あぁ。だが、あれは伝説の生き物で本当にいるかどうかも分からねぇぞ。」
「…もし、コハクがそうだったら?」
スカイオルカ。神に使えし神獣でその身体は白雲の様に美しく、その瞳は星の流れを読み解くと言われる海の王者。
「そんな…馬鹿な。」
「だが、それならあの事も納得がいく。」
カームベルトの海域に入ってすぐの事。彼等に大型海王類が襲い掛かろうとしていた。シャンクス達が戦闘態勢に入るよりも早く、言葉に現せられない様な重圧を感じた。
「…多分、あれはコハクの仕業だ。」
"覇王色"の覇気にも似た威圧感。白ひげの覇気を浴びても平気な顔をしていたシャンクスですら身体を動かす事が出来なかった。そのお陰でレッド・フォース号は窮地を脱し今も問題なく航海を続けているのだが。
「じゃあ…花子は…。」
ベックマンは昔見た古い文献を思い出す。
【その者、白き魔物を従え王となる者を玉座に導くであろう。】
コハクのあの威圧にも花子はケロッとしていた。試しにシャンクスが"覇王色"の覇気を飛ばしたが被害はクルーだけで彼女は平気そうな顔をしている。
「…守ってやるさ。」
その事を知られれば今までの様な平穏な暮らしは送れないだろう。欲に塗れた者に追われる日々。
「シャンクスさ~ん!」
自分に向けられるその笑顔を…シャンクスは守りたいと思った。