第17章 もう1度…
散々お説教をくらいシュンと小さくなっている花子にジルが思い出した様に話を変える。
《ところで、お前今何処にいるんだ?》
迎えに行くから場所を教えろと言われ花子はぱっと目を輝かせた後う~んと頭を捻る。
「何だっけ…珍世界?」
「…新世界だ。」
《新世界って…!お前1人でそこに行ったのか?!》
「正確にはコハクと2人ですけどね~。」
何故か得意気に胸を張る花子に本日何回目か分からない溜め息をジルが漏らす。このままでは話が進まないと思ったシャンクスが、彼女から受話器を受け取ると口を開く。
「まぁ、そう言う事だ。花子は俺達が責任持って送り届けるよ。」
《悪いな、面倒かける。》
流石にそこまでは迎えに行けないと思ったのか、シャンクスの申し出をジルは有り難く受け取る事にした。
「ごめんなさい、ジルさん。心配かけて。」
《聞きてぇ事は山程あるが…取り敢えず、エースには会えたのか?》
「うん…伝えたい事は伝えられました。」
「そうか…良かったな。」
エースが死んだ事は既に全世界に知れ渡っているだろうが、敢えて別れの挨拶と言わなかったのはジルなりの優しさだろう。先程とは打って変わって柔らかい雰囲気の電伝虫に、花子はホッと顔を綻ばせた。
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ジルとの連絡を終えそろそろ出航すると言う事で、花子は最後にマルコに挨拶がしたいと甲板に出た。
「用事は終わったかい?」
「うん!シャンクスさんが島まで送ってくれるって!」
だから挨拶しに来たと変わらぬ笑顔で近付く花子にマルコは愛しさが募ると同時に、もう別れなければならないのかと寂しく思う。
「今はあの船には乗ってないのか?」
「…うん。今は夏島のジルさんって人にお世話になってるの。」
本当は側に置いておきたいが自分達にもやる事がある。折角会えた彼女を危険に晒すわけにはいかない。
「んじゃ、落ち着いたら会いに行くよい。」
「…絶対だよ?」
不安そうな目で自分を見上げる花子に約束だと、マルコはちゅっと額にキスをした。
「元気でな。」
「マルコもね。」
優しく頬を撫でると嬉しそうに顔を綻ばせ甘える花子に早くも先程の決意が揺らぐマルコであった。