第17章 もう1度…
ジルの尋問は凄まじいものだった。花子は無事か、今何処にいるんだ。怪我はしてないか、泣いてはいないか。しまいにはお前等が花子を誑かせたのかと有らぬ疑いを掛けられそうになったので、シャンクスは全力で否定した。
(ベック…!早く来てくれっ!)
それもこれも全ては花子を思っての事だと分かっているので、無下にも出来ないシャンクスは心の中でベックマンに助けを求める。
「どうしたんですか?ベックマンさん。」
「…取り敢えず中に入れ。」
「花子っ!」
《何っ?!》
押し込まれる様に部屋に通された花子は神の助けと目を輝かせるシャンクスに首を傾げる。
「え?何?」
「…交代だ。」
受話器を渡され電伝虫に目を向ければ、へにょんと目玉を垂れ下げ心なしかぷるぷると震えている。
《こんの…っ!》
「?」
《馬鹿娘ぇえぇぇっー!!》
「っ?!うるさっ!?」
突然の怒号にキィーンッと耳鳴りがし花子は顔を顰めると受話器を自分から遠ざけた。
《てめぇっ!断りも無く出て行くたぁどう言うつもりだっ!?》
「え?ジルさん?!」
《コハクもいねぇ!予備で置いてあった小舟もねぇし!心配したんだぞっ!》
「…花子、ジルさんに黙って出てきたのか?」
もしそうなら彼が怒るのは最もだ。しかし、それに反し花子は首を横に振る。
「ちゃんと置き手紙しましたよ?」
《あれで納得するわけねぇだろ!てめぇは馬鹿かっ!?》
「…因みに手紙には何て書いた?」
態度は粗暴だがジルも馬鹿では無い。どちらかと言うと頭の回転はいい方だ。その彼が理解出来なかったと言う事は手紙の内容に問題があるのだろうとベックマンは思った。
「【ちょっと旅に出てきます。探さないでね♡】」
「「…。」」
《理解出来るかぁーっ!!》
相手の感情をそのまま現す生き物、電伝虫は身体を真っ赤にさせ怒り狂っている。このままではジルの血管が切れるのではないかと、本気で心配になる程だ。
「何でっ?!心配掛けない様に可愛くハートマーク付けたんですよ!?」
《あぁ、あったな!ムカつき過ぎて秒で破り捨てたが!》
「ジルさん、酷いっ!」
こいつ、本当は馬鹿なのではないかと、少しでも頭のいい奴だと思った過去の自分をベックマンは殴りたくなった。