第17章 もう1度…
花子 side
エース君の墓石の前に私は割れた彼から貰った腕輪をそっと置いた。これがあったから…私は今こうして此処に来れたのだと思う。
「…初めて会った時の事覚えてる?」
あの時は驚いたなぁ…。玄関を開けると突然人が行き倒れていたんだもん。
「余計なお世話かもしれないけど…本当に私、心配したんだよ?」
何処ででも寝ちゃうから悪い人に拐われちゃわないかなって。
「そうそう、ルフィ君にも会ったよ!エース君の弟だって知った時は驚いたけど、今思えば納得。」
屈託の無い太陽の様な温かい笑顔。真っ直ぐな瞳。きっとルフィ君も貴方を助けに行ったんだろうね。
「ルフィ君、言ってた…。エース君は強いから…だからっ、大丈夫だって…っ!」
自分の兄だって自慢気に話していたルフィ君。いつか…海賊の高みで会うんだって…そう言ってたのに。
「エース君の馬鹿っ!アホッ!っ…ちゃんと最後までルフィ君の事見ててあげないと駄目じゃないっ!」
いつかまた2人が再会した時…そこに私もいられたらなんて思ってた…。
「必ずっ、迎えにくるって…!エース君の所に行く頃には私、お婆ちゃんになってるよぉ…!」
エース君はピチピチの20代だろうけど、その頃には私ヨボヨボのお婆ちゃんだよ!
「そんなっ私でも…ちゃんと迎えに来てくれる…?」
どれくらい先になるか分からない…でも私が貴方の元に行った時、あの時と変わらず笑顔を向けてくれる?
ー当たり前だろ。ー
「っ!」
不意に柔らかい風が涙の流れる私の頬を撫でた。まるでエース君が心配するなと拭ってくれているかの様に…。
「私…エース君の事好きだよ。」
この気持ちが親愛なのか恋心なのかは分からない…。でも…彼を愛おしく思っていたのは確かだった。
ー海賊王に子供がいたとしたら…どう思う?ー
そう尋ねた時のエース君は探る様な、でも縋る様な目をしていた。
「貴方が生まれてきてくれて…貴方に出会えて…良かった。」
ふとお墓を見上げるとエース君が嬉しそうに微笑んでいるのが見えた。そして…その後ろには…。
(貴方達の息子は…とても素敵な人でしたよ…。)
白ひげと肩を並べている男の人がニヤリと笑った。その笑顔が何処と無くエース君に似ている様な気がした。