第17章 もう1度…
エース side
朦朧とする意識の中、頭に過るのは最後に見せたあいつの不安そうな顔…。
「…ごめんなぁ、ルフィ。ちゃんと…助けてもらえなくてよ。…すまなかった…。」
「何言ってんだ、馬鹿な事言うな!…っ誰か手当てしてくれ!エースを助けてくれぇっ!」
俺の身体を支え助けを求めるルフィに命の終わりを告げる。自分の身体だ…俺が1番分かっている…。
「なぁ…ルフィ。俺の…最後の頼みを聞いてくれ…。」
「最後何てっ…言うなよぉっ!?」
最後の力を振り絞り俺はポケットからある物を取り出す。今思えば…俺はあの時からあいつに惹かれていたんだな…。
「これを…夏島にいる…花子って女に渡してくれねぇか…?」
「花子…?」
「俺じゃあ…返しに行けねぇからよ…。」
ルフィに手渡したのは紐に括り付けられた燃える様な赤い石。あの日、島を発つ時に花子に渡されたもんだ。
ーこれ、持ってって。ー
ーん?何だ、こりゃ。ー
ーお守り。貸してあげるから全て終わったら必ず返しにきてね!ー
(約束…破っちまったなぁ…。)
「昔誓い合った通り、俺の人生には悔いはない。…俺が本当に欲しかったものは、どうやら【名声】なんかじゃなかったんだ。…俺は生まれてきても良かったのか。欲しかったのは、その答えだった。」
ー子は親を選べ無いんだもん。誰の子供だろうがその子はその子でしょ?ー
俺の人生に悔いはない…。だが…もし最後に願いが叶うなら…もう1度…あいつの笑顔が見たかった…。
「オヤジ、皆。…そして、ルフィ。今日まで、こんなどうしようもねぇ俺を…鬼の血を引くこの俺を…!」
花子…もう1度…お前をこの腕で抱き締めたかった…。最後に…ちゃんと伝えたかった…!
「愛してくれて…ありがとう…!」
愛してる…。
ーーーーーー
花子 side
ー愛してる…。ー
「?!」
エース君の無事を祈り彼から貰った腕輪を握り締めていたら、手の中でパキリと音がした。
「エース君…?」
掌を開くと何かを報せる様にそれは2つに割れていた。
(すまねぇ…花子。約束、守れなくて…。)
(最後にもう1度…お前に会いたかった…。)
(幸せになってくれ…。)
(愛してる…。)