第16章 シャボン玉飛んだ
ジルがカバネを殴り飛ばして一瞬、首輪が爆発するかと思われたが、どうやらスイッチでしか作動しない様に組み換えられていたようだ。
「花子…。」
本当に目の前にいるのは花子なのだとローが彼女を抱き締めようとするよりも早く、花子が彼の膝からぴょんっと飛び降りた。
「わぁ~ん!ジルさぁ~んっ!」
「花子っ!すまねぇっ、怖い思いさせたなっ!」
「私もごめんなさいぃ~!」
「…。」
((キャプテン…ドンマイ。))
わんわん泣いて擦り寄る花子をジルも力いっぱい抱き締めた。行き場の無くなった腕を泳がせ呆然としているローに、ペンギンとシャチが心の中で慰める。
「さて、やる事は決まってきたな。」
「舞台裏のどっかにあると思うよ。ケイミーの首輪と花子の枷の鍵!俺はハチの傷診なきゃ。頼むよ!」
チョッパーはハチに駆け寄り彼の傷の治療を始め、フランキーは鍵を見つける為に何処かに走り去って行った。
「花子ちゃん…。」
泣きじゃくる花子に近付きサンジは彼女の赤く腫れた頬をそっと撫でた。
「可哀想に…怖かっただろ?ごめんな…俺何も出来なくて…。」
「ううん"…私がジルさんとの約束破っちゃったから…。」
ポロポロと涙が溢れる花子の目元を指で拭いサンジはきゅっと唇を噛んだ。ふわりと肩に掛かる感覚に振り返るとゾロが顔を顰め花子を見つめている。
「…着てろ。」
「ゾロ君…ありがとう。」
剥き出しになっている花子の肩にゾロが着ていた上着をそっと掛けた。力無く微笑む花子にぐっと眉間に皺を寄せるが、まずは花子が無事で良かったと無言で頭を撫でた。
「…花子。」
ルフィは花子に近付くとぎゅっと彼女の身体を抱き締めた。
「ありがとな。ハチの事守ってくれて。」
「…私は何も出来なかったよ。」
あの時、自分は何も出来なかった。只、ハチが殺されると思うと身体が勝手に動いただけ。
「ニュ~…花子って言ったか?」
「?」
「ありがとなぁ~…俺なんかの事、守ろうとしてくれて…。」
チョッパーに手当てをされながら嬉しそうに顔を綻ばせるハチを見つめ、花子はまたポロポロと涙を流した。