第16章 シャボン玉飛んだ
花子 side
優しい温もり、懐かしい香りに包まれ目を開けると目の前にはロー君の顔。
(ロー君…。)
「花子…大丈夫か?」
その眼差しが余りにも優しくて…まだ私にその目を向けてくれるのが嬉しくて涙が溢れ出してきた。
「わぁ~ん!花子~!」
「ん"ん~…!」
「ペンギン、外してやれ。」
「アイアイ!花子、大丈夫か?」
外された轡。新鮮な空気を取り込む様に呼吸をしていると、ロー君が優しく背中を撫でてくれた。
「ロー君…?」
「本当に…花子なんだな…?」
私の頬を包み込むローの瞳は微かに揺れ私の顔を確認するかの様にじっと見つめていた。
「わあぁ~んっ!ろぉく~んっ!」
「このっ…馬鹿っ!」
後ろに枷を付けられているから抱き着く事は出来ないけど、代わりにロー君が力いっぱい抱き締めてくれた。
「おのれっ!トラファルガー・ロー!その娘を返せっ!」
「返せも何もこいつは元々俺のものだ。」
「私が彼女を買ったのだ!渡せっ!」
グズグズと胸に顔を埋める私の耳元にロー君が戻りたいか?と呟く。あんな所、戻りたくない!首を横に振ればロー君はぐっと私の肩を抱き寄せた。
「こいつはてめぇの所には戻りたくないらしいぜ?」
「おのれっ…!こうなれば、貴様諸共吹っ飛ばしてくれる!」
おじ様が突き出したのはおじ様の首に嵌めてある首輪のスイッチ。そう、おじ様の…。ん?あれ?
「別に押すのは構わねぇが…お前の首が飛ぶけどいいのかよ?」
「っ!何っ?!」
「趣味の悪ぃもんしてやがる。」
おじ様の首には私の嵌めていた首輪があって、私の首にはおじ様が付けていた金のネックレス。ロー君はそれを見せ付ける様にクイッと指に引っ掛ける。
「貴様っ!どうやってっ?!」
「さぁな。あるべき所に戻ったんじゃねぇか?」
こいつにこれは似合わねぇがなと、私の首にある金のネックレスをロー君は引き千切った。あぁ…勿体無い…。
「よぉ…公爵様。」
呆然と私達を見つめるおじ様の肩を掴みジルさんがにっこりと微笑んでいる。
「よくもうちの娘に手ぇ出してくれたなぁっ!?」
「ぐはぁっ?!」
大きく振り被ったジルさんの拳は綺麗におじ様の横っ面に叩き込まれた。