第3章 初上陸
無事、軍資金を手に入れた花子はホクホク顔で甲板に戻り上陸準備をしているイッカクに飛び付いた。
「イッカク~!」
「わぁっ?!花子?どうしたの?」
ニコニコと嬉しそうにしている花子に余程良い事があったのだろうと微笑みかけた。
「ロー君からね、軍資金貰ったの!だから、一緒に買い物しよ!」
花子にとって初めての島。それにいい加減自分の服が欲しいだろう。上陸を楽しみにしていた彼女が1番に自分を誘ってくれた事を、イッカクは嬉しく思った。
「いいよ!一緒に行こう。」
嬉しそうに微笑む花子に女の子と買い物なんてどれくらい振りだろうと、イッカクも柄に無く心を弾ませていた。
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上陸の準備を終え、それぞれの役割をローがクルー達に言い渡す。イッカクは花子のお目付け役として一緒に行動する事になり今は2人して買い物を楽しんでいる。
「これ可愛い~!」
「これ花子に似合いそうだね!」
「これ、イッカクっぽい!」
久々の島、久々の買い物に2人ははしゃぎ気付けば両腕は買い物袋でいっぱいだ。
「ちょっと休憩しよっか。」
「そうだね。あのカフェなんて良さそうじゃない?」
ひと息付こうとイッカクの指差すカフェに入り2人は腰を下ろした。
「はぁ~!楽しかったぁ!」
「私も!こんなに買い物したの久し振りだよ!」
それぞれドリンクを頼み次は何処に行こうかと話し合っていると、ふとイッカクが花子の手をぎゅっと握った。
「花子…ありがとうね。あんたと出会えて私、普通の女の子になったみたいだった。」
男所帯の中で女はイッカクのみ。たまに同乗した女とも反りが合わず、それが不便とは思った事は無かったが時々、町にいる女の子達が羨ましく思う。
「イッカクは普通の女の子だよ?」
「え?」
「一緒に買い物して、こうやってカフェでお喋りして。」
(それは、花子が一緒にいるから…。)
彼女が船に乗るのはずっとではない。花子がいなくなってしまえば、この幸せも夢となってしまう。
「…そっか。」
「うん!そうだよ!」
でも今はこの幸せを夢で終わらせたくないと、イッカクはそっと花子の手を握る力を強めた。