第16章 シャボン玉飛んだ
撃たれたハチに掛けられるのは心配をする声ではなく、彼を嘲笑する心無い声。
「んー!んー!」
「近付いてはいけない。」
「んー!」
ハチの元に向かおうとする花子をカバネが宥めようとするが、それでも暴れる彼女の頬をがっと掴んだ。
「君は私に買われたんだよ。」
「っ!」
「君の身の振り1つで私の顔に泥を塗る事をよく覚えておきたまえ。」
使えない者はいらないと吐き捨てる彼に花子はポロポロと涙を流した。
(悔しいっ!何も出来ない自分がっ!)
爆弾付きの首輪を嵌められている以上、花子はカバネに逆らえない。無力な自分に怒り身体を震わせていると、ハチのか細い声が聞こえる。
「待っ…てくれ、麦わら…!」
そちらに顔を向ければ今まさに天竜人を殴り付けそうなルフィの腕をハチが掴み引き止めていた。
「だめだ…怒るな。俺がドジったんだよ…。目の前で誰かが撃たれても…天竜人には逆らわねぇって…約束しただろ…。どうせ俺は海賊だったんだ…!悪ぃ事したから…その報いだ…。」
ハチを見下ろすルフィの瞳には彼に向けられた侮辱に対する怒りが燃え上がっていた。ルフィを見つめる目からは大粒の涙が流れ落ち悲痛な声が絞り出される。
「ごめんなぁ…ご…ごんなつもりじゃなかったのになぁ…!ナミに…ちょっとでも償いをしたくて…。おめぇ等の役に立ちたかったんだけども…やっぱり俺は昔から…何やってもドジだから…!本当にドジだから…。結局迷惑ばっかりかけて…ごべんなぁ~…っ!」
涙で震える声からはハチの優しさ…そして今の悔しさが伝わってくる。
「魚め~!撃ったのにまだベラベラ喋って…お前ムカつくえ~!」
「?!」
「待ちなさいっ!?」
苦々しげに顔を歪め天竜人がハチに銃口を向けた。それを見た瞬間、花子はカバネの制止も聞かず飛び出しハチの前に立ち塞がる。
「花子?!」
「何だえ~!お前もわちしに楯突くきだえ~!?」
「花子!逃げろっ!」
突然の花子の登場に目を見開くルフィ。逃げろと言うジルの声に耳を貸さず守る様に花子はハチに覆い被さった。
「お前もムカつくえ~!」
天竜人が引き金を引こうとした時、ルフィが彼の横っ面に拳を叩き込んだ。