第16章 シャボン玉飛んだ
花子 side
ケイミーちゃんが現れた瞬間、会場は歓喜の声が沸き上がる。私を買ったおじ様も物珍しそうに彼女を見つめていた。
(どうしよう…ケイミーちゃんが変な人に買われちゃったら…!)
それだけは絶対阻止しないと!私は意を決しておじ様の服を掴み訴えた。
「んー、んー!」
「どうしたんだい?」
「ん!んんー!」
「…もしかして、あの人魚が欲しいのかな?」
コクコクと頷く私におじ様は少し考える素振りをすると、そっと私の腰を撫で上げた。
「君が…可愛くお強請り出来たら考えてあげよう。」
(何言ってんの?!この糞ジジイっ!?)
やっぱり頭おかしいんじゃないの?!でも背に腹は変えられない!私はおじ様に凭れ掛かると甘える様に擦り寄った。
「ん…ん~…。」
「…ふふっ、君は随分と男を誑かすのが上手い様だ。」
特別に願いを聞き入れてくれると言ってくれたおじ様にまた擦り寄ると、背中にバシバシ刺さる視線が痛い。
(ヒィッ?!)
後ろを振り返れば背中に阿修羅を背負ったロー君が鋭い目で私を睨み付けていた。
「それでは始めようか。」
「ん!」
でも今はそれどころじゃない!もしおじ様が買ってくれたら、上手い具合にケイミーちゃんを逃がせるかもしれないから!
「1「5億で買うえ~!5億ベリィ~!」
「?!」
「おや、彼は。」
おじ様が手を上げようとした時、何とも間の抜けた声が会場に響き渡る。いきなり5億?!でもおじ様ならそんなのすぐに越えてくれる筈。
「ごめんよ、レディ。どうやら人魚は彼の物になってしまった様だ。」
(何でっ?!)
貴方10億で私を買ったのよ?!そんな意味を込めて見つめると、おじ様は天竜人には逆らえないのだと言った。
(天竜人って確か…。)
ーいいか、花子!天竜人に会ったら絶対に逆らうな!見かけたら地べたに這いつくばってお辞儀をしろ!ー
(あの人が…。)
どう見ても只の鼻垂らしたぶちゃいくなオジさんじゃん!もっと高貴な感じかと思ったよ!
「んー…!」
「泣かないで、レディ。人魚ならまた別の機会に買ってあげるから。」
いらんわっ!何を勘違いしたのか私の頭を撫でるおじ様にヤキモキしていると、何かがぶつかる音と共に扉が破壊された。