第16章 シャボン玉飛んだ
花子 side
私のオークションが終わりステージを降りる私におじ様はそっと手を差し伸べてくれた。
「おいで、レディ。」
物腰柔らかな立ち振舞い、優しそうな笑顔。この人なら酷い事はされないだろうと思い大人しく彼に従った。
(あわよくば、このまま逃がしてくれないなかぁ…。)
そんな期待を胸に席に戻ると何故かおじ様の膝に座らされた。
「流石ですね!公爵様!」
「こんな人間の小娘に10億とは!」
(どいつもこいつもっ!)
確かに遣り過ぎだとは思ったけどね!でも、何でこの人が私にそんな大金を注ぎ込んだのか不思議に思った。
「何、あの"死の外科医"トラファルガー・ローとユースタス"キャプテン"・キッドがあそこまで欲しがる彼女に興味が湧いただけですよ。」
(成る程ね…。)
様は興味本意でって事ね。…いやいや!興味本意で10億って頭おかしいんじゃないの?!
「それに…大した事が無かったら捨てればいい。…替えはいくらでもあるのだから。」
腰に手を回し顔を上に向かされれば狂気に塗れたおじ様の瞳。
「君は…どこまで私の楽しませてくれるのかな?」
あ…この人、やべぇ人だ…。
ーーーーーー
《いやぁ!流石は公爵様!その懐の深さに私は興奮が冷めやらみません!》
(懐が深いって言うか、財布が厚いでしょ。)
《しかぁし!これからご紹介させて頂きます商品はこの興奮を更に昂らせる超~目玉商品!ご覧ください!このシルエット!》
布に被せられた何かは司会者の人が手を翳すとライトアップされ中身が透けて見える。大きな金魚鉢の中に女の子の姿。腰から下は曲線を描いて揺れる尾鰭。
《長くは語りません。その目で見て頂きましょう!"魚人島"からやってきた!人魚のケイミー!》
(ケイミーちゃん!)
布が引かれ現れたのは先程友達になったケイミーちゃんの姿。金魚鉢の中は水で満たされ中にいる彼女は私と一緒で首輪と両手に枷を付けられ、その大きな瞳が不安そうに会場を見つめていた。
(ケイミーだ!ケイミーが出てきたぞっ!)
(よぉし!奪い返すわよッ!うちは限度2億あるんだからね!)
(花子っ!すまねぇっ!俺が不甲斐ねぇばかりにっ!)
(大丈夫だ、おっさん!花子ちゃんも必ず奪い返すっ!)