第16章 シャボン玉飛んだ
ロー side
花子の姿を見た時、俺は目を疑った。だが、俺があいつを見間違う筈がねぇ。あの時より少し焼けた肌。それ以外はあの時のままだ。顔も、髪も、声も、身体も…会いたくて仕方が無かった花子のままだった。
(…どうするか。)
ここで問題を起こすのは分が悪い。天竜人もいる。この会場も海軍に囲まれているだろうよ。
(だったら…ここのルールであいつを奪うしかねぇ。)
100万何て端金で盛り上がる奴等に反吐が出る。あいつは…そんな安い女じゃねぇんだよ。早々に終わらせようと手を上げようとした時、花子が大きく口を開けた。
(?!あの馬鹿っ!)
舌を噛み切ろうとした花子に能力を使おうとするよりも早く司会の男が轡を嵌める。ホッと安堵したのも束の間、男を睨み付ける花子の顔にドクリと心臓が脈打った。
(…えろっ。)
口を塞がれた息苦しさからか、羞恥心か…頬を赤く染め目に涙を浮かべる花子にゾクリとした。
「1千万だ。」
だが、そんな顔を他の野郎に見せるのは癪だ。人間にしては破格の金額を出せば他に手を上げる奴はいねぇ。
(勝った。)
勝利を確信した俺は思わず笑みが零れる。今度こそ逃がしはしねぇ。俺の部屋に閉じ込めて、ドロドロに甘やかして、2度と俺から逃げられない様にしてやる。
ーーーーーー
キッド side
トラファルガーの奴が何で花子に大金を注ぎ込んだのか分からねぇが、俺もあいつを渡すわけにはいかねぇんだよ!
「…2千万だ!」
まずは奴の出方を見ねぇとな。俺の参加にトラファルガーは不快そうに顔を歪め睨み付けてきた。
(この喧嘩…お前と俺の一騎討ちだ!)
宣戦布告とばかりに中指を立ててやれば、奴は案の定乗ってきやがった。
「3千万。」
「5千万だ!」
跳ね上がる金額に野次馬共からは歓声が沸き上がる。当の花子は予想だにしない高額さに俺達を心配そうに見つめている。
(本当に…呑気な奴だ。)
自分の事より他人の心配かよ。ちまちました競りにも飽きてきたからここいらで勝負を決めるとするか。
「…1億だ。」
(へぇ…。)
思ってる事は同じって事か。いきなり金額を上げてきたトラファルガーに笑みが零れる。
「2億だ!」
だがな…ここは俺も譲れねぇんだよ!