第16章 シャボン玉飛んだ
花子 side
品定めする様な纏わり付く視線。気持ち悪くなる会場の空気に身体が震える。
(こんな事なら…トイレまで付いて行くんだった!)
後悔しても後の祭り…。もうジルさんにも会えないのかと思うと涙が溢れそうになるのを必死に耐える。
《さぁ!では60万ベリーから始めましょう!》
(安っ?!)
ちょっと!60万って安過ぎでしょ?!余りの安さに溢れそうになった涙も引っ込んでしまった。
《出ました!100万~!さぁ他に手を上げる方はいらっしゃいますかぁ~!》
司会の男の人の声に会場が沸く。ちらりと手を上げた人に目を向けるといかにもお金持ちそうな、でっぷりとしたお腹の男の人が私をニヤリと見つめる。
「?!」
無理無理無理無理ぃー!?あんなのに買われるくらいだったら舌を噛んで死んでやるっ!そう思い口を開けた時、口に轡を嵌められた。
「ふざけた真似するなよ。只でさえ人間は安いんだ。…たっぷり稼がせてもらうぜ。」
「~!?」
下卑た笑みを浮かべ呟く司会者を睨み付け叫ぼうとしたけど、口を塞がれているから声が出せない。
(やだぁ…やだよ…。)
あんな男に買われて弄ぶだけ弄ばれてボロ雑巾の様に捨てられるなんて…!最悪の未来を想像しポロリと涙が零れ落ちた時、会場に声が響いた。
「1千万だ。」
《えっ?!》
(この声…。)
破格の金額に会場がしんと静まり返る。懐かしい声に驚き目を向けた先にいる人物に涙が溢れ出した。
(ロー君っ…?)
ふてぶてしく椅子に座り長い足を組んでいるのは間違いなくロー君の姿。その近くにはベポや、ペンギン、シャチの姿もあって何だか慌てている様子。
「おい、他にいねぇなら終わらせろ。」
《ハッ!…出ました!1千万~!さぁ、他に手を上げる方はいらっしゃいますかぁ~!?》
司会の煽りの声にも誰も手を上げない。勝ちを確信したロー君は私を見つめニヤリと笑った。
(どうして…?)
どうしてそこまでしてくれるの?私にそこまでする義理なんて無いのに…。
「…2千万だ!」
オークションも終了かと思われた時、誰かがロー君を上回る金額を言い放った。
(キッド…?)
手を上げたのはキッドだった。その隣にはキラーさん達の姿。そしてその近くにはナミちゃん達と、心配そうに私を見つめるジルさんの姿があった。