第16章 シャボン玉飛んだ
ジル達が会場に入った時には既にオークションは始まっていた。人間の踊り子が買われ、次に出品された男がステージで舌を噛み千切り一次中止だと幕を下ろす。
「…くそ胸糞悪ぃ場所だな。」
「本当にっ!早くケイミーと花子を助け出さないと!」
「すまねぇな…面倒を掛ける。」
頭を下げるジルにサンジ達は気にするなと笑顔を向け、異様な会場の空気に顔を歪める。
「…ジルのオヤジか?」
「ん?」
声を掛けられ目を向けるとそこにはユースタス"キャプテン"・キッドの姿。ジルは目を見開き慌てて駆け寄ると何故ここにいるのかと首を傾げる。
「オヤジ、何でここにいんだよ。従業員不足か?」
「馬鹿野郎っ!そうだとしてもこんな所で調達はしねぇ!」
見縊んなっ!と声を荒げるジルにじゃあ何の用だと尋ねれば、ぐっと言葉を詰まらせるとキラーが口を開く。
「あんたがいるって事は何かあったのか?」
「それはっ!」
事の真相を話そうかジルは悩んだ。しかし、少なからず彼等は花子の事を気に入っている。もしかしたら助けてくれるかもしれない。
(背に腹は代えられねぇか…。)
藁にも縋る思いでキッドに事情を説明しようとした時、歓声と共にステージの幕が開いた。
《大変お騒がせしました!ではオークション、再開です!》
血に塗れたステージは綺麗に掃除され、司会者のディスコの声に会場に割れんばかりの歓声が沸き上がる。
《それではお待たせ致しました!年は28!少し旬は過ぎておりますが、大人の手練手管で男性の皆様を天国へと導くでしょう!》
「ちょっと!誰が旬が過ぎてるですって!?」
「この声…!?」
聞き覚えのある声にキッドは目を見開きジルに顔を向けた。
《愛玩にするもよし!更に調教するもよし!濡羽色の黒髪がエキゾチック!花子~!》
「花子?!」
「くそっ!やっぱりここにいたか…!」
ステージに引き摺られる様にして現れたのは露出の激しい衣装に身を包み、ディスコに吠える花子の姿。一抹の希望も消えジルは顔を歪めた。
「おい!何で花子がいんだよ?!」
「あの馬鹿、ちょっと目を離した隙にどっか行っちまったんだよ!?」
「「…。」」
あれ程大人しくしておけと言ったのにっ!と頭を抱えるジルの姿にキッドとキラーは同情の視線を向ける。