第15章 仲間
サニー号の展望室兼トレーニングルーム。そこでゾロは1人鍛練に励んでいた。無心で振り下ろされる重りの付いたトレーニング器具。
「ふぅっ!」
どのくらい時間が経っただろう。しかし、いくら鍛練をしてもゾロの頭に浮かぶのはある人物の顔。
「くそっ…!」
言い様のないイラつき。こんな感情が沸き上がったのは先程散歩していた時に見た花子とサンジの姿だった。仲良く肩を並べ寄り添い買い物をしている2人は恋人同士にも見え、ふとサンジが彼女の頬を優しく撫で上げた。
「チッ…。」
大きく目を見開いた後、頬を赤く染め恥ずかしそうにハニカム花子の顔を見た時、ゾロは焦りにも似た喪失感を感じた。
「おーおー、荒れてんなぁ。」
「…何の用だ。」
やり場の無い苛立ちにドカッと器具を力任せに置いた時、展望室に繋がる扉が開いた。そちらに目を向ければサンジが水のボトル片手に中に入ってきた。
「邪魔だ、出ていけ。」
「俺だって好きで来たんじゃねぇよ。」
ボトルをゾロに投げ渡し呆れた顔でサンジは煙草に火を着ける。だったら何しに来たのだと怪訝な顔をするゾロに彼は徐に口を開いた。
「…この間、彼女を抱いた。」
「…あ?」
突然何を言い出すのかと顔を顰めるゾロをよそにサンジは煙草の煙を燻らせ続ける。
「俺は…花子ちゃんが好きだ。」
「…。」
「てめぇが彼女の事をどう思って様が糞どうでもいいが、気紛れに手ぇ出したんならこれ以上近付くな。」
彼女と言うのは花子の事だろう。何故、サンジはいきなりそんな事を言い出したのか。しかし、花子を抱いたと聞いた時ゾロの中に黒くドロドロとしたものが沸き上がってきた。
「…それを俺に言ってどうする。」
「牽制…でもねぇか。俺は彼女の笑顔を守りたい。悪戯に彼女を傷付けたら俺はてめぇを許さねぇ。」
傷付けるとは何だ?自分と花子は合意の上で身体を重ねた。それをサンジにとやかく言われる筋合いは無い筈だ。
「…てめぇには関係ねぇだろ。」
「…忠告はしといたからな。」
がちゃりと閉まる扉。その瞬間、バリンッと音を立てゾロの持っていたボトルが粉々に握り潰された。
ー花子ちゃんが好きだ。ー
「くそっ!」
自分には関係無い。なのに…ゾロはサンジの言葉が頭から離れなかった。