第14章 紳士の愛
「ん…。」
自分の身体を包み込む温もりと心地のよい微睡みの中、花子は目を覚ました。目の前には優しく微笑み自分を見つめるサンジの顔。
「おはよう。」
「…ご尊顔が眩しいわ。」
「ははっ、花子ちゃんも可愛いよ。」
ちゅっと額にキスをするサンジに思わず心の声が漏れると、当然の様に言われ恥ずかしくなったのか彼の胸に顔を寄せる。
「どうしたの?」
「んん~…。」
「…糞可愛っ。」
額をグリグリと擦り付け甘える仕草にぎゅうぅっと花子を抱き締めると、サンジも花子の頭に頬を擦り付ける。
「君は俺をどうしたいの~。」
「…骨抜き?」
「これ以上されたら俺、腑抜けになっちまうよ。」
「ふはっ!」
ちゅっちゅっと顔中にキスをされ擽ったそうにしている花子を、サンジは愛おしそうに見つめ頬を撫でる。
「好きだよ、花子ちゃん。」
「…。」
「今すぐに答えを出さなくていいんだ。君の心の隙間に俺が付け込んだ。…只、君の心の拠り所になりたい。」
真っ直ぐで純粋な好意。きっとそれを受け入れれば心は満たされる事を花子も分かっていた。しかし、その1歩を踏み出せない自分がいる。
「…私、サンジ君の優しさに甘えちゃうよ?」
「それこそ、願ったり叶ったりさ!」
「…離れてると寂しくなって他の人にいっちゃうかもよ?」
「それは糞ムカつくが…俺が君を好きな事に変わりはないよ。」
「…サンジ君、損な性格してるよね。」
「俺は全てのレディの味方だからね。」
花子ちゃんは特別だけど、と戯けて見せるサンジに花子は何処か救われた気持ちになった。
「…それにしても糞ムカつくぜ。」
「?どうしたの?」
「俺より先にあのまりもが花子ちゃんに手を出してたなんてっ…!」
「あぁ~…。」
別に隠している訳じゃ無かったが改めて言われると気まずい。苦笑いを浮かべる花子の身体をガバリと突然サンジが押し倒した。
「まぁ、あんな奴より俺の方が君を愛しているけどね。」
甘くとろける視線を向けるサンジの瞳の奥に狂気的な感情が見え隠れしているのを感じ、花子はゾクリと身体を震わせる。