第14章 紳士の愛
ポーラータング号のキッチン。そこでローは1人酒を飲んでいた。淡く揺らめくランプの光を彼はぼぉっと只見つめている。
「キャプテン?まだ起きてたんですか?」
「…あぁ。」
水を取りにキッチンに入ってきたペンギンは彼の姿に眉を下げる。花子がいなくなってからローは荒れていた。島に着けば女を買い寂しさを埋める様なローの行動は痛々しく…見ているこっちが胸を締め付けられる思いだった。
「程々にしてくださいよ。もうすぐ"シャボンディ"に着くんですから。」
「…あぁ。」
それだけ答えるとローはまた酒を呷る。今は時間が解決してくれる事を願い、ペンギンはそっとキッチンを出た。
(花子…。)
彼女がいなくなってからポーラータング号は光を失ったかの様に静かだ。航海には今のところ支障は無いが、この先それが通用する程甘い世界ではない。
(お前は…今、何処にいんだよ…。)
ペンギンは信じていた。花子は死んではいないと…何処かで元気に暮らしていると。…そう思っていないと悲しみに押し潰されそうになるからだ。
ーーーーーー
ロー side
(情けねぇな…。)
あいつが消えてからクルー達は俺を気遣う様な腫れ物を扱う様に余所余所しい。こんなんじゃ、あいつにどやされちまうな…。
「頭でも冷やすか…。」
酔えない酒を呷り、クルー達に心配され…1船の船長としては情けない姿。気持ちを切り替えようと甲板に出れば波も穏やかで月が輝いていた。
「ありゃ…。」
船の柵から身を乗り出すと海ほたるが青く光ゆらゆらと海面を漂っていた。そう言やあ、あいつは楽しそうに見ていたな。
ー雄は求愛行動としても発光するらしいぞ。ー
ーへぇ~!凄く素敵だねっ!ー
俺の話なんて1ミリも理解出来てねぇ癖に…あいつは目を輝かせ聞いていた。その後だったか?あいつが不可解な行動をし始めたのは。
ー…何してんだ。ー
ーロー君が教えてくれたんでしょ?発光は求愛のサインだって!ー
ー…それは雄がやるんだよ。ー
ーまぁまぁ、細かい事は気にせずに!ー
懐中電灯をチカチカと俺に向け光らせまた馬鹿な事をしていると思ったが、真っ直ぐに想いを伝えてくれるあいつが…たまらなく愛おしかった。
「花子…。」
お前がいねぇ日常は…こんなにもつまんねぇもんなのか?