第13章 欲
ゾロ side
「ほら、着いたよ。」
「…。」
花子に手を引かれ辿り着いた武器屋はすぐに見付かった。
(何だよ…真っ直ぐ行けばすぐだったのか。)
ややこしい道教えやがってと花子を睨むと、自分は悪くないとでも言いたげな顔をし店に入って行った。
「こんにちは~。」
「おぉ、花子ちゃん。いつもすまないねぇ。」
店のジイさんと話す花子の手はまだ繋がれている。
「おい、離せ。」
「ん?あぁ、ごめんね。流石にお店では迷子にならないかな?」
「てめぇっ…。」
勢いよく手を振り払えば花子は可笑しそうに笑いながら謝るが全く誠意が感じられねぇ。
「…。」
花子に握られていた手をふと見つめる。小さくて柔らかく、力を入れれば簡単に折れちまいそうな程細かった。
「はい、いつもの薬。」
「ありかとよぉ~。いや~、花子ちゃんに薬貰ってから腰の調子が良いんだよ。」
ジイさんと楽しげに話す花子を見ると何とも言えねぇ気持ちになる。ぎゅっと心臓を握り締められる様な変な感じだ。
「お目当ての物は見付かった?」
「…あ?」
ぼぉっとしていると花子は不思議そうに首を傾げる。まだ何も見ていない事に気付き、そんなにこいつを見ていたのかと思わず心の中で舌打ちをする。
「…お前、この後何かあんのか?」
「もう用事は済んだから家に帰るつもりだけど。」
「…そうか。」
もう少しこいつといてぇ。何故そう思うのか分からねぇが、花子を引き止める言葉が見付からず頭を悩ませていると、近くにある椅子に花子が腰掛けた。
「待ってるからゆっくり見なよ。」
「あ?」
「船まで送ってあげるよ。このままゾロ君を放置したらまた迷子になりそうだし。」
「馬鹿にしてんのか!?」
やっぱり帰れと言えば花子はくすくすと笑いながらジイさんと話し出した。
(チッ!何なんだ…!?)
経験した事の無いむず痒さ。だが、不思議と嫌じゃなく逆に心地いいと思ってしまう自分にまた舌打ちを溢す。
(花子ちゃんは、好い人はいないのかい?)
(それが全くいないのよ~。)
(勿体無いねぇ~、うちの孫なんてどうだい?)
(…。)集中できねぇ…!