第13章 欲
コハクの元を訪れた後、花子は頼まれた薬を届ける為各家を回っていた。行き交う人々に挨拶をしているとある人物に遭遇する。
「あれ?ゾロ君。」
「…お前は。」
同じく町を歩いていたのは麦わらの一味であるゾロ。キョロキョロと何かを探している彼の様子に花子は首を傾げた。
「こんにちは。何か探しているの?」
「武器屋を探してるんだが、何処にあるんだ?」
「?」
この町は確かに活気はあるがそこまで大きな町ではない。実際、彼がいる場所から武器屋は既に通り過ぎてしまっている。
「この道を真っ直ぐ進むと左手に武器屋はあるよ。」
「…通り過ぎていたのか。」
まぁ土地勘が無い場所ではそれも仕方が無い事だと花子はゾロの目的の場所を指差し教えれば、彼は罰が悪そうな顔をしながら彼女に礼を伝え来た道を戻って行った。
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「…おい。」
「あれ?ゾロ君。用事はもう済んだの?」
青果店の店主と談笑している花子に先程会ったゾロが声を掛けてきた。彼と別れてものの10分。随分早い再会に花子はまた首を傾げた。
「てめぇ、嘘教えてんじゃねぇぞ。」
「嘘?」
「お前が行った道を進んだが山しか無かったぞ。」
「…。」
花子がゾロに伝えた道と山は反対方向。武器屋までは一本道なので間違う筈は無い。
「…案内するよ。」
「あ?別にそこまでしなくてもいい。」
「私も武器屋のオジさんに用事あるから。おばちゃん、じゃあね。」
「ありがとうね!また、頼むよ~!」
店主に挨拶をし付いて来いと言う花子に、ゾロは頭を掻きながら大人しく付いて行く事にした。
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「ゾロ君!そっちじゃない!」
「あ?こっちじゃねぇのか?」
「私の事見えてる?!」
何度も言うが武器屋がある場所までは一本道。だが、ゾロは目を離せば有らぬ方向に向かおうとしていた。
「ばっ?!離せっ!」
突然、手を握られゾロはぎょっと目を見開く。振り解こうと腕を振るが花子は離さないと言わんばかりに手に力を込める。
「君を1人にしたら一生着かないよ…。」
「てめぇの教え方が悪ぃんだろ!?」
「君の頭がおかしいんだよ…。」
自分がしっかりせねばと変な使命感に駆られ花子はぎゅっとゾロの手を握り締めた。