第2章 目が覚めると
ロー side
部屋に向かう為に足を進める俺の腕の中にいる花子は何が楽しいのかケラケラと笑っている。
「お姫様だっこ~!はじめてぇ!」
「…引っ付くな。」
俺の首に腕を回し引っ付く花子に本当にこいつ大丈夫かと、色んな意味で心配になる。女部屋に着きベットに横たわらせると睡魔が襲ってきたのか枕に顔を埋め出す。
「ん…ろーくん…。」
顔に掛かる髪を払いキスの1つでもしてやろうかと顔を近付けると、不意に名前を呼ばれた。
「ありがとうねぇ…私を船にのせてくれて…。」
「…。」
「短い間かもしれないけど…わたし…皆に会えて…すごく幸せ…。」
ふにゃりと気の抜けた笑顔でそう言うと完全に落ちたのか花子からは規則正しい寝息が聞こえてくる。
「…只の気紛れだ。」
そう只の気紛れ。イッカクを庇い怪我したこいつを放って置く訳にもいかねぇから乗せた。それだけだ…。
「くそ…調子狂うな…。」
花子の額にキスを1つ落とすとまた気の抜けた笑顔を見せる。その顔が何処か妹に似ていて思わず笑みが溢れる。
「覚悟しろよ。」
飄々としたこいつの別の顔が見たい。俺だけに見せる違う顔を…。
ーーーーーー
「…花子は寝ました?」
「あぁ。」
花子を寝かし付け部屋を出ると扉のすぐ側でイッカクが腕を組み立っていた。そこまでするたぁ俺も信用ねぇな。
「キャプテン…花子だけは駄目です。」
「あぁ?」
「キャプテンなら他にいくらでも女は寄って来るでしょう!別に花子じゃ無くても。」
必死に懇願するイッカクに俺は何故そこまでするか分からなかった。またまた船に乗せた女。只それだけ。
「簡単に股開く女じゃつまんねぇだろ?」
「…キャプテンの事は尊敬してますが、そう言うところは軽蔑します。」
「ありがとよ。」
くつくつと喉を鳴らし笑いながら横を通り過ぎる俺をイッカクは本当に軽蔑した様な目で睨み付けてきやがる。
「…花子を傷付けたら、いくらキャプテンでも許しませんからね。」
あいつの傷付いた顔か…。
「同意の上なら文句はねぇだろ?」
「キャプテン!」
明日から楽しみだ。あいつはどんな顔を見せてくれんだ?